科学

110億年以降の前の銀河の暗い未来 ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた「うみへび座」のアイシタインリグ

2025-01-08

著者: 結衣

この画像、下に記載されているのは「うみへび座(蛇座)」の方向約4600光年先の銀河「LEDA 803211」。中部の明るい星形成を青色に彩られた渦状Arm(渦状腕)が取り囲んでいる様子がよくわかります。しかしそれよりも気になるのは、上に描かれているリング状の天体ではないでしょうか。

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)によると、このリングはビッグバンから約25億年後、今から約110億年以上も前に存在していた銀河の暗き未来。リングの中に描かれている巨大な銀河による強力レンズ効果を受けてリング状態が生じています。

強力レンズ効果とは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間がゆがみ、その向こうにある天体(背景天体)からの光の進行方向が変わることです。そのため、地球からはこのような形で見えるのです。

画像の場合作、遠方の銀河と地球の間にまたまた巨大な銀河が位置しているため、地球からは遠方銀河の像がリング状態にゆがんで見えています。強力レンズ効果によってリング状に見える天体の像は、一般的相対性理論に基づきこの効果を予言したアルバート・アインシュタインと呼ばれることもあります。

これらの画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で2022年2月に取得されたデータを使って作成されたものです。また、ESAから2025年初の「ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像」として2025年1月6日付で公開される予定です。ちなみに1年前に公開された同シリーズの2024年初の画像も強力レンズ効果を受けた銀河の姿でして、是非見比べてみたいですね。

ハッブル宇宙望遠鏡で捉えた「ふじがあゆ座」のアイシタインリグの画像について、さらに詳しい解説をお届けします。