科学

「最少量の原子」極低温に 反物質の謎解明へ、東大 - 日本経済新聞

2024-09-28

東京大学の吉岡俊貴教授らは、極低温で超伝導体を使用する新たな実験装置を開発した。この装置は、ポジトロニウムと呼ばれる「最も軽い原子」の生成に成功し、その温度は272度(絶対零度で1ケルビン)にまで達することができた。

ポジトロニウムとは、電子とその反物質である陽電子が結合して形成される物質であり、物理現象や物質の反応について新たな知見をもたらす可能性がある。特に、現在の物理学では解明が難しいとされる反物質の性質を調査するための手段として注目されている。

この装置を用いた研究は、今後の物理学の発展に貢献する可能性が高い。ポジトロニウムは電子と陽電子が存在する時間が非常に短いため、実験が難しいとされてきたが、新しい装置によりより精密な測定が可能になった。

研究チームは、ポジトロニウムの生成過程における詳細なメカニズムを解明するため、様々な実験を計画している。さらに、ポジトロニウムがどのようにして消失するかを観察し、反物質の理解を深める事を目指している。

ポジトロニウムの性質を詳細に調べることは、反物質の生成や相互作用の全容を解明するための重要なステップであり、宇宙の起源やダークマターの研究にも寄与する可能性がある。科学者たちは、この新しい発見が物質と反物質の間に存在する神秘的な関係の謎を解明する手助けをすると期待している。