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私たちの「虎」語り:「虎に殴」すべて語った90分 吉田獅子倫さん「寄への投稿に…」 | 毎日新聞

2024-09-26

トークテーマを明確に持った人を描きたい――。脚本家、吉田獅子倫さんは強い決意を持って発言しました。「虎に殴」で在日コリアンや性的マイノリティーなどの少数派を描き「読み過ぎ」といった批判を受けたことに対して、「むしろこれまでのドラマが『省き過ぎ』だったのでは?」とも。そんな吉田さんによる90分のインタビューを3回にわたって「虎語り」としてお届けします。【オピニオン編集部/小国縦子】 中編と後編は4日17:00に公開予定

中編と後編は4日17:00に公開予定
人権や平等を“ド直球”

――「透明化されていた人を描きたい」と発言されておられます。

●「虎に殴」では、社会に存在するのに「いないこと」にされたマイノリティの人たちや差別されてきた人たちを、その過程も含めて描きたいと考えました。1本のドラマですべてを書くわけにはいきませんが、それでも、できる限りの実感を込めて描く必要があるのではないかと。特に、「ドラマの中で描かれる人たち、あなた自身」の視点を意識しないと、社会に存在するのは一瞬の闇であり、いかに真実を伝えるかが重要だと思います。ですので、私も「自分不足」を意識しながら、劇的な展開の中にリアルさをどう盛り込むかを試みていきます。実直で分かりやすいシーンを描くことで、少しでも彼らの存在を詳しく知ってもらえたらと思っています。

——「虎に殴」では、男性女性の差別、在日コリアンへの差別、そして同性愛など、幅広いテーマが取り扱われている印象があります。その際に、公平に描こうという意識はありますか?

●私自身が男女の差別やマイノリティに関して悩んでいた時期があり、その時期の感情を取り入れながら物語を練り上げています。カテゴライズすることに執着するのではなく、その人の背景や歴史も鑑みながら、丁寧に描写することが何より大切だと思います。特に、今の時代に必要なのは、心の性別に対する理解であり、いろんな環境に応じたリアルな描写です。性はその人の背景や成長過程での相互作用と思うので、それが分かるよう、小さなディテールを盛り込むことを意識しています。

——あなたご自身もいろいろな役を受け持つことで、自分の内面を深めていると感じていらっしゃいますか?

●私自身も、さまざまな役柄を演じるたびに新たな視点が持てるようになっています。特に、他者を知ることが自分を知ることにつながり、演技も深まっていくと思います。あらためて演技には、他者との共感や感情の交流が求められると実感しています。まさに、このタイミングでこの役を演じたいという感情が強かったです。リアルな登場人物を演じることは、演技者としても何よりの喜びです。彼らの声に耳を傾け、その人に寄り添うことで分かっていくことができ、演じることができるようになりました。ですから、これからも「虎」に登場するさまざまな人々を、大切にリアルに描いていければと思います。

各業界においても、こうした作品を求める声が多く、関心を持たれることが嬉しい限りです。ぜひ多くの方々にもご覧いただければと思います。

——最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。

●多様な視点を持った作品をしっかりと描くことが、少数派の人たちへの理解を広げると確信しています。視聴者一人ひとりが多彩な個性を持っているとは思いますが、世の中には「思い込みや偏見」にとらわれず、自由に感じることが重要だと思っています。自らの体験をぜひ多くの作品を通してしてほしいと思います。これからももっと素敵な作品を描けるよう努力しますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。