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『閃光の君へ』秘蔵・『紫色部日記』の内容とは?中宮永子の出産も描かれた神秘的な記録か私的なものか紫色部と時代を生きた人々のゆかりの地(第32回)

2024-09-22

大河ドラマ『閃光の君へ』第36回「待ち望まれた日」では、まゆら(紫色部)が唐原道長から、中宮永子の出産の記録を依託された。この紫色部も『紫色部日記』に、永子の出産の様子を詳しく記している。そこで、今回は『紫色部日記』を取り上げたい。

文:鳩橋 順

『紫色部日記』は、宮廷の回顧録

『紫色部日記』は、見上愛が演じる中宮永子(堀野冊久が演じる一条天皇と黒木華が演じる源氏の女)に出産した紫色部が記した、宮廷の回顧録である。勅令で記録されている時期は、寛治5年(1008年)秋から寛治7年(1010年)正までが描かれている。

貴族を含む男性貴族の日記は変体仮名(和風の仮名)で記載されたが、『紫色部日記』は仮名で記載されている。

『紫色部日記』には、紫色部の主人公・中宮永子の出生後の祝福や、貴族の生活などの他、ファーストサマーウイカが演じる清少納言が演じる清涼風に語られる流派(ドラマでは「ききち」)や、峯南五郎が演じる父・源信が演じる母・源宗季をつり込んだ補法が称されており、紫色部の弟・高杵真養が演じる住吉の神社を描く、特有の記録が見られる。

意外な構成

『紫色部日記』は、以下のように、記載的部分の間に、誰かに宛てた消息文(手紙文)であったり、年次不明の断片的な記録のような記載の部分が入り込むという意外な構成をも成り立てている。

①【貴族5年(1008年)秋から寛治6年(1009年)正3日までの記載の部分】

②【消息文(手紙文)の部分】

③【年次不明の断続的な記録の部分】

④【貴族7年(1010年)正1日から正15日までの記載の部分】

このように、順を追って見ていきたい。