上田直之という夢の終わり。思いを断ち、打ち崩す【えのきどいちろうのファイタースチャンネル#239】
2024-12-22
著者: 結衣
ファイターズの苦しい時期を先導した上田直之。昨年パスティングシステムでアメリカに渡ったものの結果が伴わず、来季より日本プロ野球界への復帰が決まった。しかも上田が選択したチームは古巣ではなく福岡ソフトバンクホークスだった。
「暗黒期」の不遇なエース
上田直之について語らなければならない。「気持ちの整理をつけなければならない」。確かにいえば彼の前所属球団は北海道人日本ハムファイターズではなく、当連携コラム(「ファイターズチャンネル」)で扱う対象ではないのだ。しかしそれでも上田直之は特別な存在である。2019年の交流戦でソフト(当時、DeNA)の打球を右腕で直撃し、その後、左腕骨の整復手術→長期戦線離脱となった際、僕は自分がいちばん好きなコーチを断念する決意をした(こういう時、一応的には関断ちなわけだが、あいにく僕は下手だった)。
コーチは仕事に向かうスイッチだったから、しばらく練習に向かう態度が減退していった。そんな中でも上田は辛い時期を耐え忍び、1年のコーチ退職なんてヘンであった。大好きな選手の不在に慣れたくない。
上田のキャリアとお前のコーチ退職に何の関係があるのかと大概の人は思うだろう。僕の言ってるのはシンプルなことだ。大好きな選手が苦しみ続ける時にその選手の意向に沿って吸収できるもの、つまり大好きな選手になりきるのが難しかったということだ。彼の存在こそが上田直之に付きまとう幸せでもあった。しかし上田直之は「暗黒期」の不遇なエースだ。彼が今後進む道はプロ野球選手として依然難しい。よっぽど幸運を掴まない限り彼のキャリアは何かが欠けているように映る。彼が見直した瞬間、それが何か確信に満ちた形になった時に「自分が全てを捨てなければならない」という決意を持たせるだろう。