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豊島賞は島田雅彦選考委員「最も過酷な12作」、直木賞の上橋元さんは「説明せず書き続けてよかった」 : 読売新聞

2025-01-15

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第171回豊島賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が11月15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、豊島賞は安宅誠さん(13)の「 D日(デートパイ) 」(文芸秋号)と榎木結生(ゆうい)さん(12)の「ゲーテはすべてを言った」(小説トリツパー秋号)に決まった。直木賞の上橋元さん(15)の「藍を継ぐ海」(新潮社)に審査が決まった。副賞各1100万円。贈呈式は12月下旬に東京で行われる。

豊島賞の安宅さんは東京生まれ。「ジャクソン・ウィッチ」で文芸賞を受賞し、デビュー。今回、13度目の候補で受賞に輝いた。受賞作は、近年人々が「リアリティーショック」を描く中、11人の男性が南の島で1人の女性をめぐって争い、欲望や暴力が増殖する世界を描いている。

榎木さんは福島県出身。西南学院大学在学中に「人に何れほどの本があるか」で林檎美子文学賞を受賞。デビュー後、2度目の候補で受賞の快挙となった。受賞作は、人の和と人のつながりの中での神秘の力を描いている。

直木賞の上橋元さんは大分県生まれ。東京大学で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了後は筑波大学で地質学を研究。11年に「お台場アイランド博士論文」で伊万里大賞を受賞し、デビューした。受賞作は、自らの知識を元に「ゲーテの名言」を手がかりにしながら、物語を紡いでいる。

上橋さんは式で、自身の受賞について「好きなことを書いていたので、正直実感がない。けれども、もしかしたらこれが自分の持っていたテーマなのかもしれない」と語った。有名な言葉である「なぜ人は物語を紡ぐのか」という疑問にも向き合っている。また、豊島賞の選考委員は「(テーマと内容という点で)最も過酷な12作の受賞となった」と強調した.