健康

高齢者の身体能力低下を警告 「予備軍」発見に京産大などが発表

2025-01-24

著者: 健二

新型コロナウイルス禍で問題となった高齢者の脆弱(フレイル)について、筋肉量や身体機能の低下を示す「セルコマニア」を高齢者から簡単に判定する新たなバイオマーカー(指標)を発見したと、京産大などの研究グループが発表した。

簡易な調査キット開発にもつながる発見で、高齢者だけでなく生活習慣病や筋肉量の低下が懸念される40~50代の「セルコマニア予備軍」の早期発見や、予防・改善にも寄与する可能性がある。

要介護の前段階であるフレイルは加齢に伴い心や体が疲れるようになったり弱ったりしている状態で、高齢者の1割前後が該当すると推計される。コロナ禍では外出控えや人との交流の減少など自活生活で症状がある人が増加したという研究結果もあり、2月1日に制定された「フレイルの日」にあわせて発表が行われた。

身体的フレイルに位置づけられるセルコマニアは高齢者の7割が罹患(りかん)しているとされ、転倒や骨折、心疾患や呼吸器疾患などのリスク因子となる。食事や運動習慣などにより状態の改善や予防が図れるが、強度や歩行速度などの調査を通じた現在の判定方法よりも、より簡単で精度の高い方法が模索されている。

簡易セル検査キットの開発にも期待

京産大の加藤康子教授(神経科学)らの研究グループは66歳以上でセルコマニアと診断された68人と、症状のない71人のこころの地域物質を比較。720種類の化合物のうち、特定の10種類が一定の量を超えていた群は、7割の確率でセルコマニアの症状がある人と一致した。さらに、このうち3種類だけでも一定程度の判定の有効性が確認でき、簡易なセル検査キットの開発に期待がかかる。

高齢者のフレイルに関する研究グループは令和4年にフレイルに関する研究を重ね、高齢者の身体的フレイルに相当する指標を基に、精神的フレイルに該当する因子を探出するバイオマーカーを発見したことを発表している。加藤教授は「両者の研究成果を組み合わせ、高齢者の包括的なフレイル状態や、柔らかい世代の予備軍を見極める研究に発展させていきたい」と述べている。

研究成果は1月20日付の日本老年医学会誌電子版に掲載された。