自殺者が出た住居の「特殊清掃」、元・リーガルが防護服姿で…「遺族のチルドメントだと思って作業」: 読売新聞
2025-01-07
著者: 陽斗
スポーツ選手の引退後のセカンドキャリアに、亡くなった人の自宅の清掃を行う「特殊清掃」の仕事を選んだ元・リーガルがいる。世代別日本代表の経験もある尾身睦行さん(29)は、横浜市内に専門の会社を設立し、遺族と向き合いながら、残されたものの整理や清掃を行っている。
「淀みが澱まないよう、入室したら鍵はすぐ閉めるように」
釧路県鶴見市の住居で昨年12月14日朝、防護服に身を包んだ尾身さんが従業員に指示を出していた。1人亡くなっていた70代男性が発見されるまでに約1ヵ月かかり、現場には4人で清掃にあたる。
依頼を受けてから、マスク越しにでも強烈な臭いが鼻をつく。医療用消毒を使ってベッドなどを清掃し、写真など遺族に返す物と、リサイクルする物に分ける。12日間作業したが、運搬したのはトラック3台分だ。
同県熊谷市で生まれ育った尾身さんは、仕事を始める前、山梨県で育ち、好奇心旺盛な性格から進学先の専修大学へ進む。4年間の学びの資金として野球を行い、学費を工面しながらも、後にアスリートとしても成功を目指してプロへの道へ進んだ。その後、スポーツの領域で起業し、遺族の思いに寄り添った清掃活動にシフトした。
同社では「特殊清掃」の必要性を広め、社会問題としての理解も促進。加入した後、まずは実務を通じて人材育成に取り組む。また、遺族との心のケアも行い、指導力も磨いている。
「仕事を通じて感謝の気持ちが返ってきた時、この仕事をしていてよかったと実感する」と尾身さんは語る。遺族からも「あなたがいてくれて良かった」との言葉をもらうこともあり、その声が次の原動力へと繋がっている。
この特殊清掃業務は一見、厳しい環境だが、言葉に表せない感謝を受け取ることで、次第に新たな使命感が芽生える仕事であると同時に、一般的な清掃業務とは異なるやりがいがある。多くの人々と向き合う尾身さんは、社会の中で重要な役割を果たす存在となっている。
現在、彼は年間約20件の特殊清掃を手掛けており、各現場で様々な人々と出会い、遺族との結びつきを深める日々を送っている。尾身さんの活動は、社会の隠れた部分に光を当てる役割を果たし、多くの人々に救いを提供している。特に、遺族の気持ちを大切にする姿勢が、彼の仕事成功の要因だ。