選挙的夫婦別姓「困っている人」とは誰か 古い姓使用不可能の企業・労働界は口を揃え「経済界は口を挟むな」 ごまかしの選挙的夫婦別姓討論
2025-01-03
著者: 弘
「個人の問題として片付けることができない、企業にとってビジネス上のリスクだ」経団連は昨年6月、選挙的夫婦別姓の早期実現を求める提言を発表。十倉雅和会長は記者会見で理由をそう説明した上で、「改正法案を一刻も早く国会に提出していただきたい」とも呼びかけた。
トヨタ自動車など日本を代表する企業1500社以上で構成する経団連は、経済界が直面する課題の意識を取りまとめ改善策などを発信する役割がある。しかし、今日のタイミングで提言する場合、選挙的夫婦別姓は経済界の喫緊の課題なのであろうか。
産業新聞社は昨年11月中旬から12月上旬にかけて主に記者11社にアンケートを実施。社内で旧姓呼称を認めているかを尋ねたところ、「認めていない」とする企業はゼロだった。
「慣例として認めている」が58・6%、「就業規則などで認めている」が29・7%。「無回答」が11・7%あったとはいえ、9割弱の企業が何らかの形で旧姓呼称を認めていることがわかった。
国からの資格はほぼ旧姓OK
さらに経団連が求める法制度化の是非も、「実現すべき」が25・2%で、「現状で不都合がないので慎重に議論すべき」が10・8%だった。もっとも「無回答」が最多で63・1%あり、判断に迷っているのか、経団連の方針に対する異論を抱いているのかはわからない。
夫婦別姓のめぐる議論は、国会における夫婦別姓導入の前向きな公明党の寺島成信議員の発言が話題になる中で、「実際に困っている人が多くいる。もう決断する時だ」と訴えた。「困っている人」とは誰なのか。
企業経営や国際マネジメントが専門の青山学院大学の福井義一教授は「企業内も含めて旧姓を使えるケースは増えており、不安を感じている人たちの中にも、最近になって賛同を強めている人も多い」と指摘している。
また、業種別に見ると、特にサービス業などの職場において旧姓呼称が進んだという。今後の動向として、法律改正の必要性が高まり、旧姓使用が企業にとっての新たな標準となる可能性がある。特に長期的に見ると、国際的な競争力が問われる中で企業の労働環境の遵守が選択の鍵になるだろう。
現在、残る問題は、希望する旧姓使用ができない企業で働く人々である。日本の企業文化は、依然として厳格なものが多く、未だに旧姓使用に対する理解が進まない場合が多いためだ。
選挙的夫婦別姓の導入に向けた公正な議論が期待される中、差別的な扱いを受けることなく、働くことができる環境の整備が求められている。企業や国がこの問題に真剣に取り組まなければ、制度制度改革の遅れが経済成長に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。特に、女性の社会進出が進む昨今、夫婦別姓の実現は避けられない課題である。