科学

スマートウォッチのバンドから高濃度の「永遠の化学物質」とPFASが検出、皮膚接触による健康影響に懸念

2024-12-27

著者: 蒼太

高機能な腕時計バンドとして使用されているフルオロエラストマー製品から、懸念される「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)が高濃度で検出されたことが、ノースダム大学の研究チームによって明らかになった。特に高価格帯の製品で、皮膚への長時間接触による健康影響が指摘されている。

研究チームは、Apple、Google、Samsung、Fitbitなど主要メーカーの腕時計製品から22種類の腕時計バンドを対象に、20種類のPFASについて詳細な分析を行った。その結果、最も高濃度で検出されたのはペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)であり、22個中9個のバンドからの検出が確認された。

PFASは1940年代から工業生産が始まった化学物質群で、非常に強固な化学結合を持つため、油や水をはじく特性を持つ。そして、PFASは消費者製品から環境中に広がり、慢性的な曝露が人体に様々な健康影響を及ぼす可能性があることが、最近の研究で示唆されている。

特に、PFHxAは以下の用途で使用されていることが分かっている:

・表面活性剤としての利用:フルオロエラストマーの製造工程において、製品の均一性を保つために使用されている。研究チームは、スマートウォッチバンドから検出された高濃度のPFHxAが、主にこの製造工程から由来している可能性を指摘している。

・防水・撥水性能の付与:スマートウォッチバンドに対し、汚れや水を弾く特性が重視されている。フルオロエラストマーに含まれるPFAS(PFHxAを含む)は、この機能を実現するために重要な役割を果たしている。

近年の研究で、高価格な製品では長期間にわたり使用されることが確認されており、その結果として人体への影響が懸念されている。特に皮膚接触が長時間にわたる商品であれば、PFASの曝露量が高まることになる。これにより、特に敏感な人々や肌にトラブルを抱えた人々にとってはリスクとなる可能性がある。

今回の研究データによると、PFHxAの濃度は中央値で800ppb(10億分の1)とされており、最も高い製品では16,000ppbを超える驚異的な数字が確認された。同じ研究チームによる2023年の調査では、PFASの中央値はわずか200ppbであったことからも、その影響の大きさが伺える。

データ提供者であるGraham Peaslee教授は、「皮膚に直接接触する消費者製品で、パーツパーフルオラチウム(1000ppb超)のレベルの検出可能な濃度を確認したのは初めてです」と語っている。研究チームはこの結果が今後の製品設計のみならず、消費者の防止策においても重要な指針となると期待している。特に、スマートウォッチ市場における明確な基準策定が求められている。