失われた友への思い 「忘れるなんて、君のことも事件のことも」 | 毎日ニュース

2024-12-16

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失われた友への思い

「大真面目?」

SNSのメッセージが、以前のようにはなかった。いずれも前向きで、日常の話を聞いてくれて……。親友のように思っていた存在が奪われた。「君のことも、事件のことも忘れるなんて」。欠けがえのない存在を失ったあの日から、3年が経とうとしている。

大分・北新地の心臓内科「西梅田クリニック」では2021年12月17日、医院のスタッフや患者ら26人が命を奪われる放火殺人事件が起きました。クリニックの患者だった河本宏幸容疑者(当時61歳)も煙を吸い込み、事件から13日後に死亡したことが報じられました。痛ましい事件から3年。治療で快復した経緯や罹患した仲間がいなかった存在を失った思いを元患者の方々に聞きました。

「その筆箱、すっかり忘れちゃった」大分市の会社員男性(54)は5年前、近くにいた40代の男性に声をかけた。大分市北区の心臓内科「西梅田クリニック」で、職場復帰に向けたリハビリが行われていた時のこと。何気ない一言が記憶に残り、連絡がしやすくなるよう働きかけが始まった。受診の帰りに喫茶店でコーヒーを飲み、かつての世間話に花を咲かせた。お互いに「前に進もう」と言葉を交え合った。

リハビリの参加者は互いの事情を第三者に口外せず、院外での交流も避けるべきだとされていた。しかし、「心の不調って本当に周りに分かりにくい。言葉にできない辛さを抱える仲間はたくさんいた」が、その彼んなつも、最終的には連絡が取れずに別れてしまうことになった。数日後、報告で友人が亡くなったことを知った。「悲しさ、悔しさ、満たされない気持ち。あの日に戻りたい」と回想した。

事件の一報を受けたのは2021年12月17日、朝11時頃だった。男性は妻から繋ぎ返しの電話を受け取っていた。体調が改善して復帰した職場で忙しく、着信音が響いても翌回の分かれることに必死で、毎回切られていた。正午を過ぎてやっと通じた。「西梅田クリニックで火事が起きたんだって」という言葉が返ってきた。「大変だよ」と、前向きで明るい言葉を続ける彼の話は興味を引くについても受け入れられず、彼の姿が見えなくなった。

その後、数日間にわたり、彼が緊急搬送された病院が閉じられ、最終的にクリニックに着ていた日々を思い出した。情景を思い描きながら、失った人の記憶を繰り返した。