深センの男子学生刺殺、国製メディアがまさかの沈黙…SNNへの投稿は続々と削除: 読売新聞

2024-09-20

【深セン=森本幸治、田村美優】中国広東省深セン市で日本人学校に通う男子学生(10)が刺され、19日に死亡した事件について、中国当局が厳しい情報統制を敷いている。事件が発生した背景には、治安維持の観点からの懸念があることがうかがえる。

「こちらはこの事件は報じない」とある中国メディアの男性記者は発言した。現場で取材を行ったのは、日本と香港のメディアだけであり、中国メディアの報道はごく僅かであった。

中国メディアは、共産党の宣伝部門の管理下にあるため、報道内容が制約されている。事件が発生した当時、内容が漏れ出さないようにするために、各メディアに新華社通信の原稿を用いるよう指示が出されている。こうした中、今回の事件も新華社の発表に基づく情報があまり出ない状況が続いた。

情報が低調なのは、男子学生を刺殺した声の高さが事件を防ぐことはなかった政府への批判をうけることや、日本への同情や反発が高まることを避けるためだと考えられている。

なおSNNへの投稿も続々と削除されるなど、厳しい管理が続いている。深セン市で6月、日本人母子ら3人が襲われた事件について、各メディアが反日感情をあおるSNNの投稿を規制した。今回の事件では、反日感情をあおる内容だけでなく、提供された写真の投稿なども対象となった。

深セン日本人学校に通う住民は、日本の報道を引き合いに出したSNNの投稿や、日本に住む家庭らからの話で事件を知ったケースが多い。SNNを見た無職男性(19)は「報道されない状況が理解できない」と憤り、事件の背景を公式に発表しないなら「同様のことが繰り返される」と指摘した。

なお、現地でも中国政府の影響の強さを感じる声が上がっており、特に事件の背景や政府の反応にも疑問が持たれている。もちろん、学校や保護者からの信頼を獲得するためには、透明性の高い情報開示が求められている。日本のメディアは、今後もこの問題に注目していく必要がある。