科学

りそなのデジタルスキル部長に聞く「金融DXの課題」 AI活用で何が変わる?

2024-09-18

大西氏が率いるデジタルスキル部は、データの力を使って、金融業務の生産性向上に取り組んでいる。時にはマーケティングの強化やIT関連の業務も手掛け、新しい価値を提供する。現在、りそなグループの個人利用者は約1600万人。そのうち店舗への来店者は、もはや外部業者担当者への質問に対して実際に“会える利用者”は100万人に過ぎない。つまり残りの1500万人は“会えない利用者”であり、この利用者に対するサービスや情報の提供が課題だった。

“会えない利用者”にも各種サービスを提供できるバックエンドアプリ「りそなグループアプリ」のダウンロード数は、累計1000万DLを突破。利用者は順調に増えている。2021年5月、南昌裕社長にインタビューした際には、同年3月末でのアプリDLが「360万DLでグループ全体の利用数が来店数より多かった」とのことだった。それもあって3年が経過し、倍以上に増えている。会えない利用者の多くがこのアプリを利用しているわけだ。

大西氏は、「アプリを提供することによって、さまざまな情報が拡充されますので、これを基にアプリで配信する(顧客向けの)アドバイスを日々、改善しています。6年間で4,000のマーケティングモデルを作って試行錯誤しています」と話す。

例えば、新しいアドバイスを配信する場合には、ターゲットとなる層の全てに配信するのではなく、ターゲット層の中でも一部配信しないグループを設けて効果を比較するといった工夫をしている。結果として、現在は約600のマーケティングモデルが構築されている。

「セールス的なアドバイスに偏らないようにし、顧客一人一人の役に立そうな情報、例えば誕生日特典などの便利な使い方の案内、ポイントがたまるキャンペーンなどをお送りするよう心がけています」とも述べている。

アプリの利用拡大は、りそなグループの収益拡大にも寄与している。日本の中でも最先端の金融機関として、AIを取り入れた本業の変革を目指しているが、その中で「日本はまだアナログなところが多いので、まずはコストの効率化を進めていきます」と反省点を述べる。

大西氏は、「分析能力も大切ですが、コミュニケーション能力がもっと重要です。現場と話し合いながら課題を明確にし、現場が本当に求めているものは何かを見極めることが、成功への第一歩です」と強調した。今後、金融業界はデジタル化が進み、AIの進展に伴って様々なサービスの提供が期待されているが、りそなグループは独自のスタンスで挑んでいく意向のようだ。