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日産が東京オートサロン2025に出展する「R32EV」がバッテリーEVの可能性を見た

2025-01-09

著者: 裕美

RB26DETTのフィーリングをEVで再現

日産は、神奈川県にある横浜市で「日産ヒリテージコレクション」という歴史のある日産車を保存、展示する施設がある。さらに、名車再生クラブという社内のクラブ活動によってヒリテージコレクションに保存されているクルマを走れるように再生していく活動も行っている。

このように日産は「自社が作っていたクルマへの愛」が強く感じられるマーカーでもあり、その「愛」の深さがR32EVにある。

R32EVは東京オートサロン2025で展示される予定であり、発表や製作は有志の技術者の集まりによるものである。チューニングを施したのはパワートレインのスペシャリストである平工良三で、同氏はEVやe-POWER、e-4ORCEといった日産の技術の開発に関わっていた。

平工氏はこの取り組みに対して「R32 GT-Rは30年以上前にデビューしたクルマですが、いまだ感情を持ち続けるものです。それだけに、どうにかしてこの感情を後世に残すことはできないのかという思いが生まれ、始まったのがR32EVの開発です」と述べている。

R32EVの技術的な特徴

ではその作りを紹介しよう。R32EVには日産のBEV「リーフ」のモーターが前後に積まれており、バッテリーはニスモが製作した「リーフ NISMO RC_02」と同じものである。

これらの仕様はコントロールユニットに入力したデータを元にRB26DETTの加速感を再現するもので、4WDシステムもアトレーから前後2モーター4WDに変更されているが、それぞれのモーターの出力とトルクを車両重量に合わせてチューニングし、パワフルな加速を再現している。

つまりR32EVはR32 GT-Rを電動化したというより、R32 GT-Rの走りを再現できる電動化の技術をR32 GT-Rのボディに載せているというものである。その実験として「見られること」に関して「体験できる」ことが加わればどれほど楽しいだろう。

夢があるクルマ

さらに、R32EVのクルマはクラシック的な取り扱いで製作されたクルマであり、日産からも平工氏からも「この活動は商業化のためのものではない」と明言されているが、夢があるクルマと言える。

東京オートサロンは今後の自動車市場や技術進化のかたちを示す重要なイベントとして、業界全体が注目しており、多くの自動車ファンがR32EVを楽しみにしていることであろう。