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なぜ世界的な「ナイキ離れ」が起きているのか…業績悪調のユニクロにあって、ナイキに決定的に足りないもの 勝利のカギは「D2CからD4Cへ」

2024-11-05

著者: 結衣

スポーツシューズのトップメーカー・ナイキが業績不振に陥っている。立教大学ビジネススクールの田中道明教授は、「直営店やEC(電子商取引)での販売に注力し、小売店への卸を大幅に減らしたことが理由のひとつだ」と述べている。

また、スポーツシューズの世界で群を抜くブランドが、急激に失速している。10月に発表された2025年5月期第1四半期(6~8月期)の決算では、売上高が前年度同期比で10%減、純利益は28%減となり、ジョナサン・ドナヒューCEOは退任。通期の業績見通しも厳しくなることが予測されている。

ナイキは2017年以降、小売店への卸を大幅に減らし、「D2C(Direct to Consumer)」へと舵を切っていた。D2Cとは卸売や小売業者を通さず、メーカーが消費者に直接商品を販売する手法だ。ナイキも、人員商品を多く自社ECサイトと直営店のみに販売する戦略に転換していた。

ところが、ナイキの製品の人気が低下していることは明らかで、ECや直営店では他のメーカー商品と比較しても、魅力に欠けるとされている。初めてナイキを購入しようと決めても、せっかくのメリカ製品が他と比較して埋もれてしまう傾向が見えてきた。

ナイキの戦略には、なぜ失敗がついて回ったのか。ナイキの業績不振の理由については、D2C戦略が一時的に成功したことも要因のひとつだろうが、もうひとつ忘れてはいけないのは「D4C(Direct for Consumer)」という新しい視点が欠けていたからだ。

デジタル化を成功させるためには、「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」であることが必要なのだ。ナイキのような伝統的なアプローチではなく、オンラインを通じて顧客としっかり繋がっていく必要がある。

ナイキと同じく「デジタルネイティブ」でない企業でも、成功事例は存在する。ユニクロは、ライフスタイルとデジタルを融合させた「オムニチャネル戦略」を展開し、成功を収めている。強力なデジタルプラットフォームを構成し、顧客データを活用したパーソナライズされた体験が消費者の心を掴んでいるのである。

ナイキの競争は、今後大きな転機を迎えるかもしれない。どのようにして消費者との信頼関係を再構築できるのかが、勝敗を決する鍵となるであろう。この厳しい市場環境の中、ナイキが新たな戦略に舵を切る必要があることは間違いない。