NATO、バルト海でのプレゼンス強化へ 海底ケーブル破壊工作の疑いの「影の艦隊」に対抗
2024-12-28
著者: 陽斗
【ロンドン=黒川恭成】北大西洋条約機構(NATO)の事務総長は27日、X(旧ツイッター)での投稿で、フィンランドとエストニアを結ぶバルト海の海底電力ケーブルが損傷したことを受けて「バルト海での軍事プレゼンスを強化する」と表明した。NATOや欧州連合(EU)はケーブル損傷に関して、ロシアが欧州各地で展開する重要インフラに対する破壊工作の一環であるとの疑念を強めており、ロシアへの対抗措置を取る考えだ。
バルト海ではロシアがウクライナ侵攻を始めた2022年以降、電力・通信ケーブルや天然ガスのパイプラインが破壊される事例が相次いでいる。
今回の26日には、フィンランドとエストニアをつなぐ海底ケーブル「エストリンク2」が損傷していることが判明。フィンランドの警察当局は26日、南西フィンランドのクック島沖の油槽船「イーグルS」が損傷に関与しているとの疑いがあるとして捜査(だめ)し、捜索していることを明らかにした。
リタール通信などによると、油槽船は場所を借りて海底を引き揚げたままだとされ、ケーブルを損壊させた疑いがある。この影響で、油槽船はロシア産油を運搬しており、フィンランドの海域を通過中の間に、ケーブルに関わる疑いがあるとみて捜索している。
また、油槽船はロシア産原油を積んで航行しており、フィンランド側はロシアからの制裁を逃れて石油を密輸出するための「影の艦隊」の存在を強めている。
NATOによる「軍事プレゼンス強化」の表明は、フィンランドやバルト諸国と連携した対ロシア対策の一環とみられ、特に電力ケーブルの安全を確保することが急務とされる。
このような状況の中、EUの実行機関、欧州議会は26日、影の艦隊に対する制裁強化の方針を明らかにした。
バルト海では11月にもスウェーデンとリトアニアなどを結ぶ多数の海底通信ケーブルが損傷していることが報告されており、スウェーデン当局などがロシアを出港した近隣国からの船が関連しているとの疑いを抱き、捜索を行っている。