科学

明るい彗星現象「ATLAS彗星(C/2024 S1)」の消滅を確認

2024-10-29

著者: 裕美

2024年9月末、発見されたばかりの彗星「ATLAS彗星(C/2024 S1)」に注目が集まりました。過去に明るい彗星となったものを含んでおり、「クリッツ群」の候補とも考えられ、楽観的な予測ではマグニチュード5程度からマグニチュード7程度、金星よりも明るくなる可能性が考えられています。

しかし残念ながら、その夢は早くも散ってしまったようです。太陽に最接近する様子を撮影した太陽観測機「SOHO」は、ATLAS彗星が完全に蒸発・消滅する様子を捉えました。この出来事は、彗星の明るさ予測がいかに難しいかを示す一例として記載されています。

ではATLAS彗星はどれほど興味深いのか?

ATLAS彗星の発見

夜空に長い尾を引く「彗星」は、肉眼で容易に観測できるため、明るくなることが期待されています。明るい彗星の予測はしばしば注目されます。直接的には「紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)」が明るい彗星と名乗り、注目を集めました。

一方、日本で容易に観測可能となると予測された2024年10月下旬には、全国的に天候が悪化し、悪条件の中でも撮影できたという声もあれば、観測できなかったとの声もありました。

ハワイのマウナケア山で撮影された紫金山・ATLAS彗星が日本で見られるのはいつ頃?(2024年10月11日)

ハワイで撮影された紫金山・ATLAS彗星は10月20日頃まで観測・撮影の好機(2024年10月19日)

そういった中で注目を集めたのが、2024年9月27日に「小彗星軌道突然最終警報システム(ATLAS)」によって発見された「ATLAS彗星(C/2024 S1)」です。まだ正式な仮符号や名称が付与されておらず、「A11bP7I」という仮名で呼ばれているが、その注目を集めました。

なぜなら、ATLAS彗星の公転軌道は、太陽に極めて接近する「クリッツ群」に属する可能性が高いと推定されているからです。

クリッツ群の代表例は、上弦の月に接近するマイナスマグニチュード1等星となった1965年の「滄谷・関彗星(C/1965 S1)」です。ATLAS彗星はそこまで明るくならないと予測されていますが、それでも楽観的な予測では2024年10月下旬から11月上旬にかけてマイナス5等級からマイナス7等級と、金星よりも明るくなる可能性があるとされています。これが、紫金山・ATLAS彗星のマイナス5等級によって行われます。
新たな明るい彗星現象「ATLAS彗星(C/2024 S1)」(A11bP7I)を発見(2024年10月9日)

また、彗星の名前は、それを発見した人物・団体・システムが最大で3人まで自動的に割り当てられます。ATLAS彗星(C/2024 S1)と紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)は名前が似ていますが、同じシステムで発見されたということ以外は無関係です。さらに「ATLAS彗星」としての名前はこれまでに82個の彗星が割り当てられており、今後も割り当てられることがあるでしょう。

世界683主の天体(2024年10月28日)

また、彗星が消滅するかどうかの条件も、完全に解明されているとは言えません。2011年に発見された「ラフジュア、彗星(C/2011 W3)」は、小さすぎて太陽への接近時に消滅すると予測されながら、実際には生き残っていました。明るい彗星の予測は引き続き困難を伴っている一方、新たな彗星に期待を寄せることは十分にできるでしょう。

「紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)」は大彗星にならないという予測が発表(2024年7月21日)

果たして、明るい彗星がいつ現れるのか、その予測は難しいため、次の天体ショーはすぐにあると言えません。ATLAS彗星が属するクリッツ群自体、起源は317年前に現れた分割した彗星核を起点としており、それ以来百年間周りを公転していると推定されています。2024年にはATLAS彗星が新たな彗星として発見されるように、他のクリッツ群の彗星が見られる可能性はこの先もあるでしょう。

さらには言えば、彗星核が消失するか否かの条件も、完全に解明されているわけではありません。2011年発見されたクライミング堰彗星(C/2011 W3)は、あまりにも小ささゆえに太陽への接近時に消失すると予測されていながら、実際には生き残ることも多々あります。明るい彗星についての予測は今後も難航するでしょうが、新たな彗星を期待するのは致し方ないことです。