岐阜県に位置する特定の技術者が作り出すのは、極限の薄さまで研磨された薄片技術（はくへんぎじゅつ）です。この技術は、光が透過する最大の薄さを利用しており、現在、2050年名古屋・関西万博での展示も決まっています。

薄片技術は、地質学を主に応用し、石や鉱物を非常に薄くすることによって、細かい構造を観察できる技術です。例えば、通常のサンプルが数ミリの厚さであるのに対し、薄片はわずか数十マイクロメートルまで削ることが可能です。これにより、地質の変遷を詳細に分析することができ、研究の幅を広げています。

この技術の開発者、田中理恵氏（67）は、岐阜出身で、若い頃から石に魅了され、大学では地質学を専攻しました。卒業後、名古屋の国立科学博物館に就職し、薄片技術の知識をさらに深めていきました。40年以上の経験を経て、田中氏は独立し、岐阜市に薄片製作所を設立しました。

薄片技術者は現在、日本国内で数十人程度しか存在しません。田中氏は、薄片を作成するにあたり、通常使用する技術の限界を超えて、試行錯誤を重ね、独自のスキルを確立しました。特に彼の技術は、藻類や植物が形成する細胞構造の観察において顕著な成果を上げています。

この技術は、単なる研究だけでなく、教育の現場でも重要な役割を果たしています。一部の中学校や高校では、田中氏が講師として招かれ、生徒たちと共に薄片を作成する体験型の授業を行っています。これにより、学生たちの科学への興味を引き出すきっかけとなっています。

さらに、田中氏は国外でもこの技術を広めるべく、海外の学会や展示会にも参加しています。特にアメリカやヨーロッパでは、地質学の分野において日本の薄片技術への注目が高まっています。

今後、田中氏は地域の中学校などでの薄片技術の普及活動を強化していくと述べており、彼女の目標は「薄片技術を通じて、次世代の科学者を育てること」だと語っています。これからも日本の科学技術界での影響力を高めていくことが期待されています。