コニカミノルタ、遺伝子検査のミスアンプリ・ジャパンティクスを売却 テンプAIに910億円
2024-11-05
著者: 弘
コニカミノルタは5日、遺伝子検査事業を手がける子会社のミスアンプリ・ジャパンティクスをテンプAIに売却することを発表した。売却額は60億ドル(約910億円)。業種不振が続く遺伝子検査を切り離し、業務機能など他事業に資源を集中する。
売却に伴い、2025年3月期の連結業績見通し(国際会計基準)に60億ドルの売却益を計上する。最終損益はトントン(前期は45億円の赤字)とする見込みである。来期(24年10月~25年3月)中の売却完了を予定する。テンプAIは医療データ関連事業を手がけ、イリノイ州シカゴに本社を構える。
昨年にコニカミノルタと官民ファンドが8900億円を投じて共同取得していた。パフォーマンス化で市場独大が見込まれる事業機能に転換する成長のシナリオだった。しかし、新型コロナウイルスの影響による需要の低迷や業績が落ち込み、コニカミノルタは23年3月期までの4期連続で最終赤字に転落した。
不採算の遺伝子検査事業が足を引っ張り、コニカミノルタは23年3月期までの4期連続で最終赤字に転落した。23年3月期には同業種で多額の減損損失を計上したことが影響した。
コニカミノルタは当初アンドリーンと医療関連企業のミスリルIDxについて、シンガポールで上場する戦略を探っていた。しかしながら、3月には上場準備を取りやめる方向に方針を転換し、4月には同じくレルム子会社でミスクリンクスサーベイの販売促進を医用画像解析のミスカリックスサービスで売却していた。
足元では全社会的な構造改革を急ピッチで進める中、4月にはグローバル25年3月末に計画していた従業員数から2400人減らすリストラ策を公表。8月には中国江蘇省にある事業機場の生産部門を25年前半に終了する見込みで、3月末時点で7400人いる従業員の削減や6月には労務行政の削減を図っている。
同日、売却する遺伝子検査事業を除いた継続事業の純損失が25年3月期に140億円の赤字になりそうだと表明した。実績見通し(130億円の黒字)か270億円下方修正する。一定の事業の減損リスクの織り込みなどによる一過性費用290億円を反映させる。
売上高は1兆1340億円で260億円下方修正した。遺伝子検査事業を「非継続事業」に位置づけたことで460億円の減少要因になる。事業機や商業、製造用の印刷機などの事業が為替の落ち込みに振り回され、影響を一部相殺する。
今後は構造改革を着実に実行できるかが焦点になる。4月には富士フィルムグループ企業の合併機能を兼ね備え、富士フィルムグラフィックス(HD)子会社の合併機能、富士フィルムビジネスインフォーム(BI、旧富士フィルムクロックス)と合併機能部品の調達機能を統合した新会社を設立する計画を公表した。規模の拡大で調達コストを抑える戦略だったが、海外での競争法上の審査や承認活動に時間がかかり、設立時期が未定になっている。
10月には旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィシモ・キャピタル・マネージメントがコニカミノルタ株の5%以上を保有したことが明らかになっている。保有目標は「純投資」で、コニカミノルタのPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っている。構造改革に加え、次なる成長の芽の早期育成も課題になる。