イーライ・リリーの認知症治療薬「ドナペプチド」保険適用 薬価は年間308万円
2024-11-14
著者: 弘
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は13日、米製薬大手イーライ・リリーが開発したアルツハイマー病治療薬「ドナペプチド(製品名ケサンラ)」を保険適用する薬価(薬の公定価格)を承認した。1人当たりの年間費用は308万円となる見込み。
患者の負担額は月数万円程度になる。薬の費用が高騰した場合に患者の年齢や所得に応じて自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」が適用される。
保険適用は20日から予定されている。原因物質を取り除いて認知症の進行を抑える薬としてはエースと米国製の「レカネマブ」に続き国内2例目となる。2023年12月に保険適用を決めたレカネマブの薬価は年間298万円だった。
新薬が増え、対症療法が中心だった認知症治療の選択肢が広がる。半面、患者1人当たりの費用が大きく、保険財政の逼迫要因にならないか懸念されている。中医協の資料によると、ピーク時の医療費は574億円にのぼる見込み。
米食品医薬品局(FDA)はドナペプチドを7月に承認した。米国での薬価は年間372万円。
ドナペプチドは認知症の早期の段階で比較的症状の軽い患者を対象とする。病気の原因物質であるアミロイドの塊を除去する。
ドナペプチドの薬価はレカネマブよりも高いが、12カ月後をめどにアミロイドの除去が確認できれば投与を終了する。投与期間は原則18カ月まで。投与頻度は4週間に1回で、2週間に1回投与するレカネマブよりも少ない。
厚労省によると、認知症の患者数は22年時点で443万人から、40年には584万人へと32%増える。軽度認知障害は40年に612万人で22年前の610万人から10%増加する。新たな治療法の登場は喜ばしいニュースだが、同時に医療費の増加には注意が必要だ。
この新薬が日本の認知症治療に新たな光をもたらすことが期待されている一方で、それに伴う患者の経済的負担が問題視されている。医療関係者は、認知症治療にかかる費用を抑えつつ、適切な投薬が行われる体制を整備する必要があると強調している。