「合成生物」が「完全な生物兵器」に変わる可能性—38人の科学者が研究の中止を訴える
2025-01-03
著者: 陽斗
警告する科学者たち
「合成生物」を作り出そうとしていた科学者が、その取り組みを中止すべきであると警告している。
「合成微生物」は、生物の体内に取り込まれても、免疫システムに認識されないため、重大な病原体になる可能性がある。
合成生物学の概要
合成生物学は、地球上の生命が持つ基本的な特性、すなわち分子の向きを逆転させることを研究する分野である。
「合成生物」を創造することは、科学における最大級の突破口となる可能性があるが、その取り組みを中止すべきだと警告する研究者もいる。
パンデミックのリスク
現在「合成微生物」は存在しない。しかし、もしそれが製造され、実験室から流出すれば、種を超えた壊滅的なパンデミックが引き起こされる可能性があると、38人の科学者が、科学誌『Science』に2024年12月12日に投稿された論文で警告している。
論文の執筆者であるミネソタ大学の合成生物学の研究室を率いるケイト・アダマラ(Kate Adamala)は、「我々は基本的に、完全な生物兵器の作り方を教えているようなものだ」とBusiness Insiderに語った。
アダマラの研究室の取り組み
「合成微生物」のリスクが明らかになるに連れて、アダマラは自身の研究室でその製造に取り組むことを止めた。彼女の研究室には数十年にわたって寄付金が投入されていたが、それが期限切れとなったため、彼女は更新申請を行わなかった。
現在、アダマラと他の37人の研究者は、同じ行動を取るよう呼びかけている。
科学者たちの意見
論文には、「当初、我々は合成微生物が重大なリスクをもたらすかどうか、疑念を抱いていたが、次第に深刻な懸念を抱くようになった」と記されている。
合成生物とは何か?
合成生物学とは、地球上の生命が持つ基本的なルールである「キラリティ」に基づき、研究する生物学である。
キラリティとは、分子(糖やアミノ酸など)が右向きか左向きであるかを指示する性質のことを言う。
キラリティと合成生物
生命を構成する各分子には1つのキラル形状しか存在しない。例えば、DNAの骨格を形成する糖は右向きであるため、DNAは右弯曲に展開される。
合成生物学では、このキラリティをすべて逆転させた細胞を作り出すことを目指している。例えば、自然界の生命が右向きデプチドを用いてタンパク質を構築するのであれば、合成生物学における生命はその左向きデプチドを用いてタンパク質を構築するといった具合である。
薬品の開発と課題
アダマラの研究は、合成デプチドの作成に焦点を当てており、これにより得られる薬品の開発が可能になるとされている。
その研究の長期的な目標は、完全な「合成生物」の創造である。合成生物は、環境に優しい化学物質の製造にバイオリアクターを使用するための難題解決に役立つ可能性があることも指摘されている。つまり、この科学的アプローチは、既存の化学品と競争する形で新しい合成生物の市場を形成することにつながるかもしれない。
未来への道
さらに重要なことに、科学者たちは合成生物の進化は、自然界の微生物と相互作用しないことから、より安全であると認識している。
アダマラはこう述べている。「指を強く叩いても感染されることがない、完全なバイオリアクターを作れるのか?そうはいかないかもしれない。だが、そうすることで強い問題を生む可能性がある」
合成生物学の研究が進む中、今後の発展やリスクに関する議論は避けられません。科学者たちの取り組みがどのように我々の世界を変えるのか、引き続き注目が必要です。