出張朝市は心の支えだけど 店を出せども花売れず「欲求ない」年の瀬【能登半島地震】

2024-12-31

著者: 芽依

石川県輪島市の商業施策で開かれている「出張朝市」は31日、年内最後の営業を迎えた。出店する「中通生花店」には、供花や正月の花を買う人が訪れていた。

「朝市で亡くなった同姓に手向ける花を買いに来ました」と話す客とやり取りしていた店主の中通恵子さんは、夫を能登半島地震の発生から20日後に亡くした。夫はがん患中だったが、地震で一気に体調が悪化したという。「もうご飯の時間だよ。早く帰ってきてよ」といつももどかしがっていた。

昨年7月、恵子さんを心配して子供たちが出張朝市に店を出すよう奮起してくれた。久しぶりに知人に会い、気を紛らわすことができたが、花の売れ行きは芳しくなかった。「食べ物や着る物が一番大切な状態で、花は売れない」と答える。

9月の豊作も追い打ちをかけた。秋彼岸を前に、たくさんの花を出荷することになった。

子供たちも「大赤字にならなければ続ければいい」と言ってくれている。出張朝市での交流は心の支えにもなっている。

それでも、恵子さんの気持ちは晴れない。本来の朝市が復活するまで少なくとも2、3年はかかるとみている。現在81歳。「希望も何もない。この厳しい環境から抜け出すにはどうしたら良いのか」と考え込む日々が続く。新しい朝市で店を出すのはもう無理かな。