「AI-RAN」でソフトバンクのネットワークは何が変わる? ユーザーのメリットとビジネス上のインパクトを解説
2024-11-16
著者: 弘
ソフトバンクが11月13日にAI-RANのコンセプトを具現化した「AITRAS(アイティラス)」を発表しました。AITRASは、神奈川県藤沢市にある慶應義塾大学・湘南藤沢キャンパス(SFC)で実証実験が行われ、この基地局のソリューションは報道向けにも公開されました。強化学習した基地局制御に採用されるGPUのコンピューティングリソースを生かし、無線通信だけでなく、生成AIも同時に動作させるのがAITRASの特長です。
公開されたデモでは、画像をまるごとAIで解析し、犬型ロボットが不審者を追従する様子や、自動運転車が検知した走行上のリスクを言葉で監視者に伝える様子などが確認できました。また、無線ネットワークを制御するのと同じサーバー上で動き、処理にはNVIDIAのプロセッサ「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」が活用されています。
AI-RANのコンセプトは、2024年に開催されるMWC Barcelonaで発表される予定で、その具体像が早くも明らかになった格好です。ソフトバンク自身は、NVIDIAのGPUやAIプラットフォームの「NVIDIA AI Aerial」を基盤として活用しつつ、無線信号の処理ソフトウェアを開発し、AITRASとして目立ちました。
AI-RANは、無線制御のためのDU(Distribution Unit)を強化したシステムに成長します。具体的には、基地局においても設計する要素が多数あり、電波を実際に発射、受信するためのRU(Radio Unit)や、アクセスポイント、プロトコル処理、コントロールの役割を果たすCU(Central Unit)が加わり、信号の処理を行うDUに分かれます。とはいえ、5GではCUとDUに機能分離されているため、そのCUやDUは広域(ほぼ)と呼ばれる独特なコンピューティングサーバーにしたのが、AI-RANの特徴です。
AI-RANは、強化学習に基づいたコンピュータの処理能力を生かし、その基盤上で無線信号の処理だけでなく、AIも同時に動作させるというのがその主な中身です。実際、ソフトバンクのAITRASでも、NVIDIAのCPU/GPUを使い、ソフトバンクのアプリケーションとして、無線制御「い外」のエッジAIを動作させている。SFCで発表されたデモの多くは、それだ。
DU側と同じ基盤にAIを実装するメリットは多数ある。1つが、実際に信号を受信する端末と距離が近く、遅延が少ないこと。遅延が少ないということは、逆に言えば、距離的に遠く離れたサーバーのAIを動作させるのとは異なり、基地局のすぐそばにあるため、その分リスポンスが良くなる。
実験では、意図的にネットワーク間への遅延を拡大したところ、ロボットの処理が追いつかない状況も確認できた。ロボットが人間を追従するには、その動きを瞬時に解析し、その動きを制御する必要がある。ソフトバンクによれば、1秒間に10回のロボット制御が求められるという。1回あたりの処理に許容される時間は100ms。反対に、LLM(大規模言語モデル)の処理には60ms程度が可能だ。そのため、無線区域では遅延波が40ms以内に収まらない限りは難しいという。
これを実現するには、基地局に近い場所でAIを動作させる必要があるというわけだ。
実験では、意図的にネットワーク遅延を発生させたところ、ロボットの処理が追いつかない状況も確認できた。ロボットが人間を追従するには、その動きを瞬時に解析し、その動きを制御する必要がある。ソフトバンクによれば、1秒間に10回のロボット制御が求められるという。しかし、DU側の強化学習の処理は追い付かず、AIによる制御の利点を引き出すことは難しいという認識がありました。
総じて、AI-RANの導入は、ソフトバンクの通信サービスの質を大きく改善し、将来的にはより多くのビジネスチャンスを生み出すことが期待されています。他社に先駆けた技術進化が、ユーザー体験の向上につながるか、続報に注目です。