病気、育児、介護、学業などによる離職・休職期間は、日本では「空白の時期」と呼ばれ、ネガティブに捉えられている。しかし、近年そうした期間を「キャリアブレイク」と呼び、肯定的に捉えられる文化が日本にも広まりつつある。

この流れの中で、「キャリアブレイク」の経験やその背景について語る人も増えてきた。やりがいはあった。しかし年収が1000万円を超えた。それでも、過労死を避けるために辞めた。ちょうど40歳の誕生日を迎えるときのことだった。

現在は仕事から離れたキャリアブレイク中で、収入は多いときの10分の1になったという。しかし、その実情は言うまでもなく明るい。しかしなぜなら今彼は、忙しく働く日々で積み重ねた大事なものを取り戻すことができているからだ。

40歳の節目に、キャリアブレイクを決断

加藤さんはIT系企業でデジタルマーケティングや広報のコンサルタントとして7年間働いていたが、その後都内の広報専門職に転職し、2000人の応募者の中から選ばれ、戦略広報担当課長に就任した。

興味がある職域で、実際にスタートアップしていた。それまで2人の子どもの育児を経験した加藤さんは、何度も取り戻しを言われ続けた。"移行を誓う時間を設けてもいいんじゃない？"と。

"僕も妻の意見はもちろんながら、特に20代は忙しかったから、‘30代になったら’と先延ばしにしていました。そうして‘30代に入ったらよより忙しくなったうえに、子どもたちが生まれて、さらに余裕がなくなって……。どこかで、えい、だめだ、やらないといけないって思うようになったんだ"といったように語る。

2023年、40歳の誕生日を機に、彼は退職を決意した。家庭環境も考慮し、キャリアブレイクの期間は「最低2年」と決意した。妻はフルタイムで働き続けるため、加藤さんの収入がある程度減っても家庭に問題はないと、そういう算段もあった。しかし、実際にはそれよりも早く仕事を見つけることができたかもしれない。

今後のキャリアを見据え、この2年間は自己戦略を見直す貴重な機会と捉え、リフレッシュするための時間や経験をつむことができたらいいと、加藤さんは心から思っている。