朝日新聞デジタルマガジン&[and]
2024-10-29
著者: 蓮
最近のドラマを見ていると、不倫や離婚、復讐、風俗に依存症など、人間の深淵を描くようなドロドロ系作品が目白押しです。もはや昔からそうした系譜はあり、近年でも特に注目を集めた「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(2014年)のような目新しいスマッシュヒットがあったが、全体を通して多数作が並ぶのはなかなか貴重です。エンタメ界もコンプライアンスなり、以前より自主規制が強まる中、なぜこのような真逆の状況が起こっているのか? コンプライアンスやSNS、電子コミックの影響など、エンタメの背後を探る必要があります。
【注目】とするけど続くと気になる…! 広がる“復讐”マンダ
2024年夏、多くのドロドロ系ドラマが放送された。萩本欽一が主演の不倫ドラマ「夫の家庭を壊すまで」(テレビ東京)、不倫ドラマ「どうか私より不幸でいて下さい」(日本テレビ)などなど。堀ちえみの描く「あなたの子ども」なども多数。さて、ショートドラマでも依存症をテーマにした「満田サレズ、辞められら」(ABCテレビ)にも注目された。
このようなドロドロ系の流れは少し前から片鱗があり、湘南真一子の澱結場が話題になった「離婚しない男」(テレビ朝日)、女性風俗がテーマの「買われた男」(テレビ大分)も話題に。さらに今秋も、高校生の不倫をテーマにした「3年C組は不倫しています。」(日本テレビ)や、妄想を描く「わたしの宝物」(フジ系)、復讐もの「愛人転生―サレ妻は死んだあとに復讐する」(MBS)と、視聴者の間で議論が高まりそうなドロドロ系ドラマが続いている。
さて、どうやら不倫などの愛憎劇が多かった1960年代にスタートしたTBSのフジテレビ時代。男をたっぷり抱えての妖怪でありながら、初恋の人を思い続ける未亡人を描いた花園倶楽部の「真摯な男」(TBS系・1974年)が社会現象を引き起こした。昼ドラ以外でも、「黒い瞳」(日本テレビ系・1971年)や、山田太一原作の「崖っぷちのアルバム」(TBS系・1977年)など、さらには1983年「金曜日の妻たちへ」(TBS系)では、「金曜日の夜は妻が電話に出ない」と言われるほどの人気を博した。
1997年には「青い鳥」や「不機嫌な果実」(共にTBS系)、通り過ぎた官能原作の「失楽園」(日本テレビ系)などがやや流行したが、2004年「渡辺と迷える」(フジ系)では原点回帰的な「このさまりのついたメス猫!」、「アバレ女」など数多くの名作が公開されている。2014年「昼顔」(フジ系)も大ヒットし、2016年頃には「せいしがあゆ」など、注目作品が続き、視聴者の間でその議論が続いている。
このように不倫などの愛憎劇が多かった時代を考えれば、現在の健康的ドラマと逆の傾向である。
近年、ネットフリックスやアマゾンプライムなどのストリーミングサービスと共に、視聴者層が多様化していることも背景にある。一方で、視聴率が高い作品は若年層から高齢層まで幅広く支持されている傾向も見られ、特に社会問題を扱った作品や心理描写に富んだ内容が好まれるようになってきた。さらに、SNSの普及が、作品の宣伝方法や視聴者との対話のあり方を変え、時には物語の展開にも影響を与えている。今後どのような作品が視聴者の心を掴むか、ますます目が離せなくなります。