痛みを感じる神経回路、世界初の再現

およそ2cmほどの小さな細胞塊は、皮膚から脊髄、そして脳へと至る神経ネットワークのミニチュアモデルです。アメリカのスタンフォード大学の研究チームは、400万人の皮膚細胞を使って人間の体の構造に似た「オルガノイド」を製作しました。この成果により、人間の神経回路を再現した画期的な「感覚アセンブロイド」の開発が実現しました。

目指すは痛みの伝達メカニズムの解明

この研究の目的は、痛みの伝達を細胞レベルで再現することで、痛みのメカニズムを解明することです。なぜ脳は特定の刺激を痛みとして認識するのか、そのメカニズムを探ることで、より効果的な治療法の確立を目指しています。

感覚アセンブロイドの詳細

この神経モデルは、「感覚アセンブロイド」と呼ばれています。人間の皮膚細胞を再プログラムし、iPS細胞をベースにして構築されています。このモデルによって、神経細胞が痛みの感覚をどのように伝えるのかを観察することが可能になりました。以前は実現できなかった観察が、実験室で直接行うことができるのです。

痛みの感覚とその解析

研究により、神経細胞が痛みの情報をどのように伝達し、感じるのかがわかりました。具体的には、神経の構造を再現し、痛みの信号を発生させることに成功しました。これにより、痛みがどのように脳に送られるのか、またそれに伴う生理的反応をリアルタイムで観察できるようになったのです。

未来の治療法への希望

この技術により、慢性痛の治療に新たな道筋が開かれる可能性があります。現在、成人の22.5％が慢性痛を抱えていると言われ、その解決策は急務です。研究者たちは、このアセンブロイドを用いて、痛みの認知に関連する新しい治療法を開発しようとしています。

痛みを軽減する革新的なアプローチが期待される中、この研究がどのように医療の現場で役立つのか、注目が集まっています。