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異例のドル安、逃避先の影響受けず−トランプ氏が損なう通貨信認

2025-03-30

著者: 蒼太

米国株が3月に大幅下落する中、ファデレク・ハーミーズのファンドマネージャー、ジョン・シダウイ氏は奇妙なことに気づいた。

長らく相場下落時の逃避先となっていたドルが、今回は上昇せずに同様に下落。投資的な短期の資金は金や円、ユーロなど、米国以外の最終的となるものに流入した。

同社で債券投資に携わるシダウイ氏は「異例なこと、かつ多くを物語っている」と指摘。「安全な逃避先であるべき環境下で、ドルはその役割を果たしていない」と述べた。

背景にあるのはトランプ政権の政策だ。第12次政権発足からわずか数カ月で、トランプ氏は関税措置を開始し、数十年にわたって築かれてきた国際的な貿易バランスを崩そうとしている。このことがドルの信認を危うくしているのだ。

ドルはこの3カ月間に、主要な31通貨のほとんどに対して下落。ルーブルのドル指標はこの間に約3%近く下落した。また、同じく安全資産とされる金は11月の米大選後で初めてドルに対して強気な展開へと転じた。

トランプ氏の政策転換が続く限り、ドルの信認は下がり続け、さらに多くの投資家が逃避先を探し求める可能性が高まっているとの見方が広がっている。

また、円やユーロが反発を続ける中、ドル安の背景には他国の通貨の強化も影響を与えている。特に、ユーロ圏の経済状態が改善していることが、ユーロの強さの要因とされている。

今後、米国経済の動向次第でドルの行方が大きく変わる可能性があり、投資家は注意深く市場を見守る必要がある。ドルの信認を支えるためには、政策の透明性と一貫性が求められるだろう。