野菜の価格、もう下がらない? 専門家「壁が崩れた」その心は
2025-01-21
著者: 蓮
コメや野菜の価格高騰が止まらない。総務省の昨年11月の全国消費者物価指数で米類は前年同月比で6.6%超上昇。農林水産省によると足元のキャベツの価格(1キログラム当たり)は平年の約2倍、白ネギは2.5倍だ。日々の値上がりに直面する中、北海道人北海道大学の舩塚雅宏教授(農業経済学)は「小売業者も消費者も低価格に安住していた。我慢していた産地は低価格に戻りようがない」と手痛く指摘した。
米不足で入った消費者のスイッチ
農産物価格の上昇の背景にある短期的な要因は需要の逼迫(ひっぱく)だ。さらに中長期的な要因は、生産資材の価格上昇や人手不足による人件費の高騰だ。
生産者はこれまで、コストが上昇しているのに価格転嫁ができずに我慢していた。生産者が価格を上げたいと思っても、スーパーマーケットなどの小売業者は「高い価格では売れない」と言ってきた。スーパーマーケットの価格交渉力は強い。農協などが前面に出て交渉しても、再生産価格に見合った小売価格にはならない。価格を上げにくい構造が日本のスーパーマーケット(流通網)にはある。
だが昨夏の米不足で、その状況は変わり始めた。結果的に「値段がいくらあっても良いから米を買いたい」といった消費者の(行動変容の)スイッチが入ったのである。消費者のスイッチが入ったことで、食材を買いたいという意欲が高まりつつある。
現在は上がるべきなにかに上がっていない壁が崩れたと考えている。高い価格を逃さず捉えた小売業者の方はすでに試行錯誤をし始めている。流通業界は価格転嫁が進んでいくようだ。
したがって、今後は上がるべき商品の価格が上昇するのではないか。生産物の価格上昇が続いているのだ。
オーガニック市場として期待
農林水産省は食品・農産物の適正な価格形成を促すため、今年の通常国会に関連法案を提出する意向を表明しており、今後の動向に注目が集まる。しかし、農産物はコストとは無関係に、(天候などの影響で)短期的に価格変動することも多いため、期待も高いが慎重な視点も必要だ。
また、食材の流通の透明性を高めることやオーガニック市場の拡大にも注力が必要とされている。今後数年の間に、消費者の意識が高まったことに伴い、オーガニック食品の需要は増加することが予測されており、それに応じた価格形成も進むとみられている。これにより、健全な農業の維持と発展が促されるかもしれない。
市場変化を考慮したゴール
このように、現時点では農産物の価格上昇が続く中で、今後の動向に注目が集まっている。したがって、農業ビジネスの利便性向上のためには、消費者のニーズを考慮しつつ、柔軟に対応できる体制が求められる。価格形成の進化を見極めれば、農業が変わる可能性が高く、健全な成長を遂げる可能性も秘めている。