【研究成果】目のない線虫は光を感じる?光受容に関わる遺伝子や神経を発見
2024-11-14
著者: 芽依
本研究のポイント
線虫(*1)Pristionchus pacificus(以下P. pacificus)について、光の感知に必要な遺伝子および神経を発見しました。
従来の研究と比較して、線虫Caenorhabditis elegans(以下C. elegans)とは異なり、P. pacificusには多様な光受容性メカニズムが存在することが明らかになりました。
この線虫は1万種以上も存在し、その一部は植物や動物に寄生し、人間社会に対して甚大な被害をもたらすことがあります。光は線虫にとって重要な情報であるため、本研究の成果は新たな駆除法の開発に寄与する可能性が高いと言えます。
概要
愛知大学大学院生命科学研究科の中山博一博士及び五十嵐恭子助教の研究グループは、P. pacificusの光に関する動的な反応を明らかにしました。本研究成果は、線虫における光受容性メカニズムの理解を深めることが期待されています。
光受容は全ての生命が持つ重要な感覚系の一つです。地球上で最も多様な動物群の一つである線虫は、数多くの生息環境を持ち、1万種以上が知られています。その中には、独特な光受容のメカニズムが醸成されてきたことが確認されています。
本研究で使用したP. pacificusは、C. elegansの進化生物学的なモデルとしても知られていますが、その感覚神経系や感覚を伝える遺伝子の比率は大きく異なります。C. elegansでは光受容に関連する主要な機構が明らかになっていますが、P. pacificusにおいては、まだ新たなメカニズムが存在することが分かりました。
さらに、今回の研究によってP. pacificusの光受容に関わる遺伝子の特定にも成功しており、これが線虫における光適応の理解を深め、今後の生物学的研究において新たな視点を提供するでしょう。
本研究を見ることで、線虫が持つ光に対する感受性について今まで知られていなかった側面を明らかにするものであり、学際的な観点からも重要です。
研究成果は2024年1月14日に、国際的な科学誌PLOS Geneticsに掲載される予定です。
今後の展望
今回の研究により、P. pacificusが持つ光受容に関する遺伝子や神経のネットワークは、他の線虫に対する新しい視点をもたらすことになるでしょう。これにより線虫の生態に関する新しい知見が得られ、農業や生物学的制御の分野に貢献することが期待されています。
研究に使用されたP. pacificusの特異な光受容メカニズムが、環境適応にどのように寄与するかを解明することで、今後の生物学的研究への道が拓かれることでしょう。 特に、特定の環境で生存するために、どのように光を利用しているのかを明らかにすることは、生命科学の重要なテーマの一つとなっています。