「学校図書館の質を上げて」加速する読書離れに、書店の受け止めは
2024-09-17
著者: 蓮
月に1冊も本を読まない人が6割超に上ることが、文化庁が17日に公表した2023年度の「国語に関する世論調査」で判明した。同じ調査項目が設けられた08年度以降では最も多く、初めて5割を超えた。スマートフォンやネット交流サービス(SNS)の普及が原因ともされ、文化庁の担当者は「読書離れを懸念しており、国語力の育成に影響が出かねない」と危機感を示している。
大分市中津区にある「隆盛館書店」の2代目店主、二村知子さん(64)は、「国民の読書離れが加速していることを表す今回の調査結果に対し、国主義の危機を感じる」と、切迫した様子で語った。
二村さんは、「インターネット上で情報が横行する時代にあって、言論の自由を保持しながら、信頼に足る情報を提供できる重厚なメディアが本である」と述べる。一例として「例えばノンフィクションはジャーナリストや専門家、事件・事例の当事者らが編集者と共にファクトチェックをし、時間をかけて完成させる」と指摘。その上で「読書の機会が減ることで、国民の真実を見る力が衰え、正しい政治判断ができなくなってしまう」と危惧している。
今回の調査では、本の選び方として「書店で実際に手に取って選ぶ」人が57.9%と、2008年度の74%から減少した。この49年創業の13坪(約40平米)の書店を母から継いだ二村さんは、常連客に信頼できる本を揃えたり、著者を招いたトークイベントを開いたりし、客との交流を重視している。二村さんは、「自分が今触れている情報は本当に信頼に値するものか」と立ち止まって考えられるよう、書店としてこの魅力を伝えていく必要がある」と述べた。
では、国民の読書離れを食い止めるにはどうしたらいいのか。子どもたちの読書推進活動に取り組む「NPO法人大分県 読書の時間」理事長の田口茂人さん(50)は、小中学生の読書環境を整備する重要性を強調する。「(子どもたちは)生まれ育った地域について、接する情報量に差が生まれてきており、本はその場にいなくてもいいようになれる世界に触れることができる。乏しい時代に読書の機会を持つことは重要だ」と指摘する。
その上で「本との出合いの機会を作るためには、学校図書館が最適。しかし、学校図書館の本は量ばかりが重視され、質が保たれていない。古い本ばかりで読みたい本がない(子供の)声も聞く」と学校の図書館の重要性を訴えた。
一方、「なぜ読まれていないのか」(集英社新書)の著者で文芸評論家の三宅香織さんは、社会人にとっても「テキストを読むことや、自分から遠い他者や場所への想像力を得ようとする機会を増やすことは必要なスキルである」と指摘。ただし、現代の企業は「場当たり的なコミュニケーション能力やタイルマネジメント能力を重視するあまり、長期的な視野で物事を考え、そのための知識を得る能力を軽視しがち」と分析している。