新しい超伝導体「脱離金属ジルコナイド」を発見:超伝導体ではない2つの物質を固溶
2024-12-20
著者: 裕美
TrZr2系における転移温度の上昇を目指す
東京大学、北海道大学、広島大学、ローマ大学サピエンザ校の研究グループは2024年12月、新たに合成した脱離金属ジルコナイド(Fe1-xNixZr2)が、超伝導体であることを発見した。
研究グループは、超伝導体ではない「FeZr2」と「NiZr2」の2つの物質に着目し、これらの物質が共融しながら固体となったFe1-xNixZr2を合成し、その結晶構造と物性を調査した。
実験では、多結晶試料をアルゴン雰囲気で合成し、X線回折によって結晶構造が連続的に変化していることを確認した。また、Fe1-xNixZr2に特有の格子定数aおよびcのNi組成依存性を調べ、Ni組成に対してa軸が長く、c軸が短くなることが分かった。この現象は電子顕微鏡や光電子分光によっても確認された。
さらに、磁化率や電気抵抗率、比熱を測定し、超伝導特性を評価した。磁化率の温度依存性については、Ni組成に伴い大きな逆磁性シグナルが観測され、超伝導が発現することも確認された。特に、x=0.6では2.8Kという転移温度を示し、ドーピング型の超伝導相関が得られた。このドーピング型超伝導相関は、銅酸化物系や鉄系超伝導体に類似していると言える。
結晶の温度依存性を室温まで測定すると、30K付近で結晶の異常が観測された。特に、鉄場中冷却(FC)とゼロ場中冷却(ZFC)のデータでも超伝導の異常が確認され、材料特性が生じている可能性がある。現在、材料の詳細は未解明だが、材料の中であるNiZr2の性質が、Fe/Ni固溶体において弱まることによって超伝導が発現すると考えられている。
今後は、NiZr2の性質やFe1-xNixZr2の超伝導特性を詳細に研究することで、TrZr2系における転移温度のさらなる上昇を目指す。
今回の研究成果は、東京大学大学院理学系研究科の島田宣之教授、北海大学大学院工学研究科の鈴木良太准教授、広島大学大学院先進理工学研究科の田中祐樹准教授、ローマ大学サピエンザ校のNaurang L. Saini教授らによって報告された。この発見が新しい超伝導材料の開発に寄与することを期待している。