血液透析を受けている患者は、一般集団と比較してがんの発生率が高く、死亡原因の約10%を占めています。特に、このような患者の診断や治療、予後についての知見は乏しく、そのための疫学研究が必要とされています。

岡山大学医学部の鈴木和人教授（兼：高等研究院ヒト生物学高等研究特任研究者）を中心とした研究グループは、日本国内でのがんの罹患率とその予後に関する大規模な共同研究を実施しました。この研究には502人の血液透析患者が参加し、それぞれのがんの診断、治療、長期予後について詳しく分析されました。

その結果、血液透析患者の3年生存率は70%であり、一般的な透析患者（同73%）と比較しても同等であることがわかりました。この研究では、特に手術療法を受けた患者群での生存期間が長く（同83%）、死亡原因としては感染症や心不全などが多く見られたことが示されました。

本研究の成果は、今後の透析患者に対する診断や治療方針の改善に寄与すると期待されており、がんの早期発見および治療の重要性を強調しています。さらに、国際的な医学雑誌『Clinical Kidney Journal』に2024年1月20日に発表予定です。この研究成果が患者の生命を救う新たな一歩となることを願っています。