トンボの複眼に似た金属、熱ダメージ少なく 産総研製作 - 日本経済新聞
2024-12-15
著者: 芽依
産業技術総合研究所の杉村尚信主研究員と本村大成研究チームは、微細な構造の金属を室温で作る技術を開発した。熱で原型の構造が崩れるのを防ぐことと、トンボの複眼の形をした金属製作にも成功した。微細構造が持つ優れた特性を産業に積極的に活用しようとする動きが広がっている。
現在の金属製品では、金属の微細粒子を原型に向かって跳ばして薄膜を作る。だが微細粒子と一緒に舞い上がる電気などによる熱の影響で、原型の構造が崩れてしまうことがある。杉村氏らは、電気などが原型に与える影響を最小限に抑え、微細環境での金属作成を実現した。
微細な金属は、特殊な性質を持つことが知られており、例えば生物は大きさがナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微細な「ナノ構造」を持つ。ナノ構造には、疎水性や接着性など有用な性質を持つものがある。工業的に生産するためには、原型のナノ構造を低コストで金属に写し取る精密な加工技術が必要になる。
通常の金属製品では、金属の微細粒子を原型に向かって飛ばして薄膜を作る。一方、杉村氏の研究チームは、電子などが原型に直接影響を与えないように微細粒子だけを吸引できる技術を開発した。トンボの複眼と呼ばれる金属の微細構造を造り、金属の土台となる微細粒子を作り出した。
これにより、金属に樹脂などを流し込み、トンボの複眼の形をしたレンズを作ることができる。その結果、金属に透明なレンズをもたらすことができ、電子の形をしたレンズを作ることができることが判明した。
1つ1つの目の大きさは直径40〜60マイクロメートル(マイクロは100万分の1)メートルで、レンズの表面で詰め物の役割を果たすナノサイズの素材も再現できた。ナノ構造の表面での駆使が再現されており、ナノのサイズで金属に写し取ることができると期待されている。
このナノ構造は、従来の金属にはない、金属に写し取られた特異な特性を持つ素材を生み出す可能性を秘めていて、今後の産業利用が期待されています。金属が光学部品や非常に高い導電性を持つ素子として活用されることが望まれています。驚くべき進展と共に、この技術がどのように産業界に革命をもたらすか注目が集まっています。