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RNA干渉薬パチシランの長期安全・有効性を確認|最新医療ニュース|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト

2025-01-23

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フランス・ルクレムラン・ビシェールセデックスのデビッド・アダムス氏らは、遺伝性ATTRアミロイドーシスに伴う多発神経障害(hATTR-PN)患者に対するパチシランの第Ⅰ相非盲検延長試験(OLE)と第Ⅱ相プラセボ対照ランダム化試験(RCT)APOLLOの参加者を対象としたグローバルOLEの最終結果をJAMA Neurology(2025年1月13日オンライン版)に報告した。「RNA干渉薬として最長の試験において、パチシランの安全性と有効性が確認できた。プラセボ群からパチシランに移行した患者の成績から、遺伝性ATTRアミロイドーシス(hATTR)に対する治療開始の重要性が裏付けられた」と結論している。

プラセボ群もパチシランに最長5年間継続

hATTRはトランスサイレチン(TTR)遺伝子に変異が生じ、異常タンパク質が生成され、神経組織に蓄積する病態であり、多様な臨床症状を呈する。TTR遺伝子の異常により生じるアミロイドは、神経障害や心筋障害などを引き起こし、重篤な合併症を伴うことがある。TTR遺伝子を標的とした治療薬が複数開発されており、RNA干渉薬であるパチシランもその一つである。

グローバルOLEは、第Ⅰ相OLEと第Ⅱ相APOLLOの参加者を対象とした延長試験であり、第Ⅰ相パチシラン群(25例)、APOLLOプラセボ群(49例)、APOLLOパチシラン群(137例)の計211例が登録された。全例にパチシランを投与(0.3mg/kgを3週間ごとに静注)し、最長5年間継続した。グローバルOLE参加者の平均年齢は61.3±12.3歳で、男性156例(73.9%)、211例中138例(65.4%)が試験を完遂し、そのうち117例が親試験からパチシランを投与されていた。

各種機能やQOL評価において悪化を抑制

ポリニューロパチー関連障害(PND)スコアで評価した歩行能力の改善を見ると、グローバルOLE完遂者はプラセボ群に比べ、76例(55.5%)が歩行能力を維持、13例(9.5%)で改善が認められた。プラセボ群のPNDスコアが2A/2B(歩行に係る指数はニックルが必要)だった49例のうち3例(6.1%)が改善、29例(59.2%)が不変、17例(34.7%)で悪化が見られた。

神経障害スコア(NIS)の変化は、平均10.9±14.7であった。また、自己神経機能不全に関する指標や現在の生活の質(QOL)を測定したNorfolk QOL-Diabetic Neuropathy(Norfolk QOL-DN)とRasch-Built Overall Disability Scale(R-ODS)も、それぞれ平均4.1±16.7、−3.7±6.2の変化が認められた。

評価結果

以上の各評価指標について、第Ⅰ相パチシラン群、APOLLOプラセボ群、APOLLOパチシラン群に分けて調査したところ、他の2群に比べAPOLLOプラセボ群で明らかに改善の度合いが低く、あるいは悪化の頻度が大きく、早期からのパチシランに基づく治療の重要性が裏付けられた。

重篤な有害事象は47例(22.3%)に発生し、infusion reactionは34例(16.1%)に発生し、試験期間中の死亡は41例(19.4%)であった。生命予後についても、早期からパチシランを投与していた患者で明らかに良好であった。