人類の遠い先祖は「双子出生」がスタンダードだった!?
2025-01-09
著者: 海斗
研究チームはここ数年、猿人類の産子数(1回の出産で生まれる子の数)がどのように進化してきたのかを調査してきました。
今日、ヒトを含む猿人類は基本的に1回の出産で1匹の子を産むことがスタンダードとなっています。
その一方で、同じフォルモント類でもイヌやネコは1回に複数匹の子を産むことが一般的です。
このように1回の出産で1匹の子を産むグループを「単胎動物」、1回の出産で複数匹の子を産むグループを「多胎動物」と呼びます。
猿人類全体を見渡すと、単胎動物よりも多胎動物の方が一般的であることがわかります。
では、ヒトを含む猿人類のグループはその始まりからずっと「1回の出産に1頭」を主流にしてきたのでしょうか?
そのためチームは今回、猿人類の産子数の進化史を再構築するために、猿人類全体の系統樹に対して、できるだけ多くの種の既知の産子数をマッピング(猿人類155種および他の猿人類791種を網羅)。
それらの種の出生時期と成体時の平均体サイズ、妊娠期間などのデータにも注目しながら、数理的アルゴリズムを用いて、猿人類の各グループに見られる産子数の特異を比較分析し、そこから産子数がどのように変遷してきたかを推定しました。
その結果、多くの猿人類において1回で産まれる子の数が系統的に保持されており、近縁種の間でもよく似ていることが示されています。
例えば、イヌ科やネコ科のグループは、獣の系統においても変わらず、1回に複数匹を産む多胎動物であることがわかりました。
このことから、猿人類の現生種を見たとき、ヒトやそのほかのチンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどの種は基本的に1回に1頭の子供を産んでいます。
他方で、キツネやリス、グラゴと呼ばれる小型の猿人類には、時折何回も子を生む種がいることが確認されており、多胎での出産が頻繁に見られる傾向にあります。
そのため、初期の猿人類においては「1回に1頭を産む」と「1回に2頭を産む」のどちらが主流だったのか、という問いが常に付きまといました。
これを系統樹から分析してみると、約6000万年前にいた猿人類の先祖は1回に1頭を産む可能性が高いと判断されます。
つまり、このことから猿人類の出産は当初「1人に子」とよりも「双子」の方がスタンダードであったことが示唆されています。
最初の猿人類が誕生したのは、約6500万年前と言われています。
果たして猿人類のグループはその始まりから「双子出生」が基本として存在していたのか、この問いはまだ研究の余地があります。
また独自の角度で、猿人類の中に「1回に1頭の子を出産」する特異が進化したのは、どの段階で重要だったのかを探っていく必要があるでしょう。