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レバノン、モザイク国家の悲劇 統治崩壊でヒズボラ台頭 - 日本経済新聞

2024-09-26

【カイロ=伊部崇光】イスラエルが隣国レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラを壊滅させようと大規模な空爆に踏み切った。血まみれの内戦を戦った「モザイク国家」は、再び悲惨な戦場に変わろうとしている。分裂や統治の崩壊を放置した国際社会にも責任の一端がある。

「敵はレバノンの国家と国民と抵抗勢力に圧力をかけている」と、ヒズボラの指導者ナスラッラー氏は最近の演説でこう発言した。一見するだけでは複雑な情勢に見える。だが、現地の人々の間では、この状況は長年の対立の延長線上にあり、安定の道は遠い。

レバノンはシーア派、スンニ派、キリスト教徒など多様な宗教グループで構成される国であり、内戦の記憶が依然として色濃く残っている。少数派のシーア派が力をつけた背景には、イランの支援がある。ヒズボラは、そのイランの意向に従って行動し、地域の軍事力としての役割を強化してきた。

国際的な介入が求められる中、レバノン国内では人々の生活が困窮している。経済危機も拍車をかけ、国民の不満が高まっている。さらに緊張が激化することで、多くの人が再び戦争の恐怖にさらされる事態が懸念されている。政府の機能不全とヒズボラの力の台頭に、世界は目を向けるべきだ。これからのレバノンは、厳しい未来が待ち受けているかもしれない。