イタリアのフィレンツェ大学やミラノ大学に所属する研究者たちが発表した論文「古代DNAがポンペイのプラスターキャストの解釈を覆す」は、古代都市ポンペイでの火山噴火によって埋もれた人々に関する新しい歴史的知見をもたらしました。

79年、イタリア南部のヴェスヴィオ火山が噴火し、小さなローマの町が灰に覆われ、住民たちは埋もれてしまいました。この遺跡からは様々な遺体が発見されており、多くの遺体は火山の灰により原型を留めたまま保存されています。しかし、この新しい研究は、それらの遺体のDNA分析によって新しい理解を提供しています。

研究チームは、86体の遺体の中から14体のDNAを抽出し分析しました。その結果、これらの遺体がどのようにして特定の家族に属していたか、具体的な系譜が明らかになりました。特に、両親から子供への遺伝的関連が示され、長年の考古学的な仮説を覆すものとなりました。

例えば、ある遺体は母親のものとされていましたが、DNA分析によって、血縁関係が非常に強い成人男性と子供であることが判明しました。この研究は、エトルリア人の祖先や当時の人々の移住のパターンにも新たな視点をもたらすでしょう。

また、分析から浮かび上がったのは、埋まっていた人々の中には、ハプログループが異なる多様な集団が存在していたことです。特に、東地中海地域からの移住者の影響が強いことが確認され、これが当時の社会構造や文化的背景を深く理解する手がかりとなります。

この研究は、ポンペイの発掘によって得られた情報を再考する重要な機会となり、古代ローマの社会がどのようなものであったか、どのように構成されていたかについてさらなる研究が期待されています。これにより我々は、当時の人々の生活をより正確に描写し、歴史の新しい一ページを開くことができるかもしれません。