健康

貧血時に体内で赤血球が増える新たなメカニズムを発見

2024-09-20

【ポイント】

重度の貧血になると未熟な赤血球が増えるのではなく、造血幹細胞が急速に増殖し、より赤血球を作りやすくなることを発見しました。

重度の貧血状態下では油脂代謝に関わるアポリポタンパク質E(ApoE)が増加し、表面に超低密度リポタンパク質(VLDL)をもつ造血幹細胞に作用してより赤血球を作りやすくなることが分かりました。

本研究の成果によると、これまで治療が困難だった重度貧血の治療法開発に結び付くことが期待されます。

【概要説明】

熊本大学国際先端医学研究拠点の三原研究室が、日本国内の研究チームと共同で、体内で赤血球が増える新たなメカニズムを発見しました。これにより、急激な貧血が起こると赤血球になる未熟な細胞(赤芽球)が増えるだけでなく、造血幹細胞が急速に増殖を始めることが明らかになりました。急激な貧血が発生すると赤血球に対する需要が急増し、体がそれに応えて新たに赤血球を作り出します。

この研究は、貧血の治療法に新たな可能性をもたらすものとされており、特に重度の貧血に対する新たな治療法の開発が期待されています。現在の貧血治療法は限られているため、研究結果によって新たな治療アプローチが示唆されています。

【今後の展開】

エリスロポエチン(EPO)は貧血治療に一般的に使用されているホルモンであり、一部の患者においては効果が薄いことが知られています。しかし、本研究の結果によれば、貧血患者において新たな治療法の導入が期待されており、特に造血幹細胞をターゲットにした治療法の開発が重要とされています。

【用語解説】

1. 赤血球: 血液の中で酸素を運び、二酸化炭素を排出する役割を持つ細胞。

2. 造血幹細胞: 血液の細胞を作り出す能力を持つ細胞で、骨髄に存在。

3. アポリポタンパク質E (ApoE): 脂質の代謝に関与するタンパク質で、心血管疾患との関連が研究されています。

4. 超低密度リポタンパク質 (VLDL): 肝臓で生成される脂質の一種で、体内で脂質を運搬する役割を果たします。

この研究は、国際的に認められている科学雑誌『Nature Communications』に掲載される予定で、貧血の新たな理解が進むことが期待されています。