健康
PGE2ががん免疫の代謝ブロッカーを誘導する~PGE2はヒトがんに浸透した免疫細胞のエネルギー源を制限し不活化する~
2024-11-06
著者: 結衣
プロスタグランジン(PG)は、さまざまな生理機能に影響を与える重要な因子です。特に、がんの発症や進行を抑制する役割を持つ一方で、がん細胞の進行を助ける側面もあります。本研究では、主にPGの中でもPGE2がどのようにがん細胞に関与するのかを解明しました。
成庵周 医学研究科特任教授、Siwakorn Punyawatthananukool研究員らは、医学部附属病院の症例をもとに、がん浸潤免疫細胞の活性度とそのメカニズムに関する386件の細胞の単一細胞RNAシーケンス解析を実施しました。その結果、PGE2ががんに浸透した免疫細胞を不活化させる主要な因子であることが明らかになりました。
研究では、PGE2がT細胞やM1型マクロファージのEP4受容体に結合し、これらの細胞のエネルギー代謝を制限することで、抗腫瘍活性を著しく低下させることが確認されました。また、これにより、免疫細胞の増殖や移動、抗がん活性が抑制され、免疫チェックポイント阻害剤の効果が弱まることが示されました。
この研究は、がんに対する新しい治療戦略を開発する上で重要な知見となり、特にEP4受容体をターゲットとした治療法が期待されています。さらに、がんの微小環境でPD-1が関与する免疫抑制のメカニズムを解明することで、PGE2の関与も含めた新たな治療法の開発が進む可能性があります。
本研究の成果は、2024年11月1日に国際科学誌「Nature Communications」に掲載されることが決定しています。今後もこの分野の研究が進展することが期待されます。