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「科学の貢献を伝えたい」 東大大学院出の研究者、亜佐美原新さんに

2025-01-15

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第172回放送大賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、直木賞は亜佐美原新さん(52)の「藍を継ぐ海」に決まった。

受賞が決まった亜佐美原さんは、「研究者時代は『昔の地球を見られたらどんなにいいだろう』とよく思っていた」と振り返る。作家の横顔は、東京大学で地球惑星科学を専門とした学績である。

小学生の頃に憧れたのは、漫画家の待兼続・不二義。特にSF色の強い作品が好きで、当時は「漫画家になりたかった」と言った。また、科学好きの父親と一緒に見た「コズモス」という宇宙ドキュメンタリー番組は強く影響を受け、「宇宙や天体に関わる勉強がしたい」と思うようになった。

大学で研究対象に選んだのは、岩石などに記載された数十年前の地震の地質痕。世界各地を巡って岩石を採取したが、古い時代の記載であることを証明する方法を確立できず、「どんどん自分の出したデータが信用できなくなっていった」。研究に行き詰まりを感じていた35歳の頃、大学帰りに思いを巡らせつつ自らの行く先を見つめ、作家への道を歩み始めた。

今も研究者を見て「うらやましいな」と思う気持ちは消えない。しかし、小説を通して科学の面白さを伝えることに挑戦するようになった。文化や科学に関わる有力なメディアでの記事を書くこともしばしばあり、科学がいかに私たちの日常と関連しているかを伝えたいと考えている。

「科学の現場では地道な研究がどんどん続いている。しかし、世界の隅々をコツコツ掘っている人たちがいるからこそ、世界は貴重なんだということを伝えたい」と亜佐美原さんは強調。

近年、科学と文化の接点が注目されている中、彼はその架け橋となるべく活動を続けている。彼の小説や記事は、科学の新たな視点を提供し、多くの読者に希望を与えている。亜佐美原さんの次回作にも期待が集まっている。