驚愕の事態:エムポックス再流行に「複合要因」
2024-09-24
著者: 芽依
アフリカ中部を中心に流行するエムポックス(サル痘)。世界保健機関(WHO)は8月、「国際的に憂慮される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、新たな流行の原因として複合要因が影響していることを示唆した。国内でエムポックス患者を診断した報告を持つ、国立国際医療研究センターの長には、今回の流行の特性や日本での対策を聞いた。
高リスクの流行
――エムポックスの緊急事態宣言は、日本も含め世界的に流行した2022~2023年に続いて2回目である。
――今回の流行には重症化や死といった可能性があるウイルスが流行している。エムポックスは、エムポックスウイルスによる感染で、発疹や発熱などの症状が出現し、発症への接触などで他者に感染する。その結果、今回の流行の中核となっている、アフリカのコンゴ共和国(旧ザイール)では今年1月から9月15日までに、疑い例も含めて2万5000人以上の患者が確認され、1800人以上が亡くなった。
エムポックスウイルスは、主に大きなコンゴ地域に分布し、アフリカでは40年以上にわたって流行しているものの、世界的に流行が続くのは初めてである。
――エムポックスウイルスは、主にコンゴ周辺の温暖湿潤な森林地帯に分布し、特に皮膚接触感染が多いため、感染が広がりやすい状況が続いている。前回は比較的症状の軽いクレミンウイルスが流行し、患者の多くは同性間の性接触によって感染している。
感染拡大の要因
――最近数年、大規模流行が続く理由は何でしょうか。
――背景には複合的な要因が存在します。1980年代に天然痘が根絶され、エムポックスが代わりに流行し始めたこと、今では近年の気候変動が影響しているとの報告があります。エムポックスウイルスの伝播に関連した生息環境の変化や、人間の密度が高くなった地域での感染リスクの増加が要因とされます。
国内の対応は
――日本での治療や予防体制はどうなっていますか。
――日本では確認されたエムポックス患者は少なく、国内においての医療機関を含め全体7医療機関で特定な接触研究を行い、欧州で確認された野生動物との接触等が疑われる場合に慎重に対応している。ただし、国立国際医療研究センターでは、エムポックスの診断に特化した体制が整えられている。
最近の流行に関するデータや、国際的な基準策定が急がれています。WHOを含む各国がこの問題に取り組んでいるため、今後の対応に注目が集まっています。エムポックスの危険性を注意深く見守ると同時に、適切な医療機関への受診を呼びかける必要があります。