進化で見つけた「世界的発見」 なぜ篠草カタバミは赤く進化したのか
2025-01-20
著者: 雪
地球温暖化を先取りするように、身近な植物が進化した……。
世界に先駆けた発見の場は、ふとした偶然から得られた。
「道端のカタバミは赤っぽいのが多いな」
2020年初夏、東京都杉並区の住宅街。数多の深野種子(生態学)は生後約10カ月だった長女を抱えながら散歩していた。
目についたのは、アスファルトの路面にへばりつくように生えている篠草カタバミの赤い葉だった。
主な内容は、
・「赤」が高温に強い理由
・手がかりは「河港時代の文献」
・将来は別々の種に?
・温暖化が引き起こす進化
・都市部のタンポポも…
そして、疑問に思った。
ダイセンや鵱の周りでは緑色のカタバミしか見かけないのに、なぜ色が違うのか。
カタバミは赤も緑も同じ種であるが、葉の色は生まれてから捨てられたのだ。この点で赤カタバミとは異なる。
都市部の地表を覆うアスファルトやコンクリートは、太陽の熱を吸収し、温度を増加させる。
夏場には地表面の温度が50度を超えることもあるため、熱に強い赤いカタバミがより多く成長したと考えられている。
「こうした高温が、カタバミを赤色に進化させていったのではないか」と、当時在籍していた東京大の研究者は語った。
東京都近郊の26地点でカタバミの葉の色を調査したところ、都市部では赤色が5割を超えていたのに対し、農地や草地ではほとんどが緑色だった。
市街地と公園のカタバミを比べると、数十メートルでも離れていても「赤」と「緑」の割合が大きく異なっていた。
色の違いが高温によって生じているのかを調べるため、実験室や温室で条件を変えて栽培してみた。
その結果、気温35度の状態では赤色のカタバミが緑色よりも生育が良く、よく成長することが分かった。これに対し、気温が25度では逆に緑の方が成長した。
このように、調査結果から高温時に赤色が有利に働くことが証明された。
まさにこれは、温暖化が引き起こす生物の進化の一例である。
さらに、赤いカタバミの成長が著しい一因として、赤色が太陽光の影響を受けにくいため、光合成蒸散作用においても有利だという可能性が示唆された。
この現象が今後、他の地域にも広がっていくのか、もしくはそれぞれの地域で別々の種が生まれ換わるのか、注目されている。