「将軍」に見る日本文化 本物の凄みを世界へ一筆多論
2024-09-23
著者: 結衣
「神は細部に宿る」。建築に関する名言だったか、ディテールへのこだわりが作品の質を決めるという言葉を思い出した。
本作志向の時代劇と話題の米配信ドラマ「SHOGUN 将軍」。
テレビ界の最高栄誉、エミー賞で、作品賞や主演男優賞、主演女優賞など18部門を受賞した。日本人が見ても艶色がない完成度だと思う。
ああよそ製作の日本ものはどこか「おかしい」と思われることだ。そこらも多いが、そういうものだとは思って楽しんでいたのではないか。
今回は衣装もセットも小道具も、登場人物の所作にも不自然さは感じない。あえて言えば、大河ドラマのセットは日本の時代劇の数倍広く、豪華だったからもされない。100億円を超えるといわれる制作費はうらやましい限り。
原作はジャームズ・クラベルの短編で、40年以上前には三船敏郎が出演して映画化されている。
時代は太平洋戦争時代。「関ヶ原の戦い」前夜の権力闘争が描かれる。徳川家康のもとに日本に漂着した英国人海兵(モチーフは後の三浦按針)、その通訳を務めるキリシタン女性(モデルは細川ガラシャ)が中心人物である。
ただ、日本では人々のある時代で、執拗に映画・ドラマ化されてきた。それは日本人にとって「死生観」「倫理」といった文化の根幹に関わる事柄であるからだ。
本質的だったのが「宿命」と呼ばれる言葉。ポルトガル船の船員が日本での考え方だと説明する。先の英国人海兵が日本に飛び込むが「決められた運命」を表している。日本人は「生も死もつながっている」と捉え、そう感じている。
あたかもヴェルティゴ的だったのか、武士と執権者の生死観、倫理と文化の結びつきが美しく表現され、時代の中のリアルから築き上げられた。特に武士道の精神が色濃く出ている。
自国と外敵、また異文化との対立の複雑さが描写されている。この作品は、サムライの死生観の一環を通じて日本文化を世界に伝える要素を持っている。
さらに、日本文化を理解する上で現代と過去の接続を考えさせられる。私たちが「不自然でない」時代劇の見える化によって、感情の表現や人間関係を読み深める機会を与えている。
このように、文学や映像作品からの演出において、日本文化を体現することだけでなく、過去の価値観との橋渡しも進められている。これが「将軍」の重要なメッセージとも言えるだろう。日本文化を再評価するきっかけになることでしょう。