科学

間もなく到来予定の「アトラス彗星」、太陽接近時に崩壊か 観測衛星が瞬間とらえる(Forbes JAPAN)

2024-10-30

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「頭部を失った彗星」を見たことはあるだろうか。金星よりも明るくなると一時は予測され、「ハロウィーン彗星」の愛称で期待を集めていた「C/2024 S1(ATLAS)」は、太陽への最接近に耐えられず、どうやら崩壊してしまったようだ。それを示唆する画像が、米宇宙空間観測局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同運用する太陽観測衛星「SOHO」(SOlar and Heliospheric Observatory)から届いた。

【画像】太陽観測衛星の拡大分光コロナグラフが捉えたATLAS彗星が崩壊したと思われる様子は、地球を周回するSOHOに搭載された拡大分光コロナグラフ(LASCO/C2)という装置に捉えられていた。この装置は太陽の光圏を遮る円盤を備えており、太陽に接近する天体を影響できる。

9月末に発見された「ハロウィーン彗星」彗星は通常、太陽の近くを周回して再び太陽系外へと旅立っていくが、太陽に近づきすぎると分解・消失する場合もある。しかし、このように太陽の至近を通過する光景を持つ彗星を総称して「サングレーザー」と呼び、太陽に最接近する「近日点」を無事に通過すれば、すぐに明るい彗星になる。

アトラス彗星も、サングレーザーの1つ「クリティック群」に分類される。米ハワイ大学が運用する小彗星地球接近最終警報システム(ATLAS)によって9月27日に発見されたこの彗星は、太陽系の外縁を取り締まる氷微彗星の集まりである「オールトの雲」からやって来た長周期彗星である。

●「ハロウィーン彗星」はどこへ? 天文情報サイトのSky&Telescopeによれば、アトラス彗星は28日、太陽から約120万キロの距離で近日点に到達した。先月末~今月にかけて巨大な天体ショーを見せてくれた「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)」の太陽との最接近の距離が約5800万キロであったことを考えれば、アトラス彗星は太陽に極めて接近したことが分かる。

この彗星が近日点を超えると、8日(木)のハロウィーンの朝に北半球からも確認できるようになるという。さらに12月まで観測できる可能性があるが、果たしてそれまで何が起きるのか。

●今後はどうなる? 期待されていたような明るい彗星になる可能性は、残念ながら薄くなってきた。アトラス彗星が太陽に近づきすぎて分解し、「コマ」と呼ばれる頭部を失ったのは、ほぼ確定だ。ハロウィーンの天体ショーとして、非常に細長い尾が11月初旬の朝空に見られる可能性がある。最も可能性が高いのは、彗星がばらけてしまうことだそうだ。

それでも、Sky&Telescopeの速報に寄れば、11月4日の日の出に南半球から彗星の残骸を見られるかもしれない。予想とは裏腹に彗星が分解した場合、頭部のない尻尾だけの光景が広がるかもしれない。今後の動向に注目が集まる。