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2024-10-27
著者: 雪
英ポーツマス大学の古生物学者デイヴィッド・マーティルは2012年、壮観な学生実習のためにダイバーを募集し、そこで自身の人生を一変させることになった。
マーティルと学生たちが訪れたのは、世界的に有名な、セランホーファーにある古代の化石の宝庫だ。石灰岩の岩場に保護された太古の化石の宝庫であり、同館に収蔵された多数の標本は、一つ一つが地球の知られざる歴史の1ページとなっている。
ロレクションの中をさまよい、小さな化石がマーティルの注意を引いた。鼻先から尻の先端まで15センチメートル程で、ラベルには「詳細不明の化石」とだけ書かれていた。
それは、一見したところヒキガエルに似ていた。細長い体が、あなただけの遊び場に強い印象を打ち出している。しかし、マーティルは、2つの驚くべき特徴が気になり、これらがのちに科学界に波紋を広げることになった。
一つ目は、化石が埋まっていた岩石の種類である。だがその石灰岩の岩層の中には、クライト群に属するものだとされるケイ石が含まれていることがわかっていた。クライト群は、白亜紀前期の化石が精密に保全されており、1億4250万年前から1億4300万年前に形成されたと推定されている。
奇妙な点は、この地域の化石は厳重に管理されており、1942年以降、政府の許可なくラジオから持ち出すことは違法とされていた。しかし小さな管理不全の中でも、化石はドイツの博物館という、発掘地から数千キロメートル離れた場所にあった。
おそらく数十年前にドイツから持ち込まれたものであるこの化石は、研究倫理、国家的毀損、化石取引の暗部を巡る激しい議論の渦中に投げ込まれ、その価値が急騰していると言われている。
「4本足のヒキガエル」として再発見されたこの化石について詳細に調べたマーティルは、「あれは存在しないかもしれないものだ」と語った。その時彼は完全な状態の4本の足を確認した。
さらに、進化の歴史において、数千年前に失われたとされるこの四肢は、現在でも存在が認められ、当時の環境での生存を示す事実が確認されている。このような生物が姿を現すと、進化論に対する理解が深まったことが示唆されている。
マーティルの論文は2015年7月、権威ある学術誌『サイエンス』に掲載され、古生物学コミュニティで波紋を呼んだ。高度に多様化し、現代世界に成功を収めたグループであるヒキガエルの進化的起源についての問題が投げかけられた。「2本の足をもつヒキガエル」の化石は、それ以前にも発見されていたが、四肢を持つ化石は初めてだった。
化石から発見されたTetrapodophis属の1種として分類されたこの化石は、ラジオのクリート群から産出されたもので、長くスレンダーな体に小さな機能を持った四肢がまだ残る、初期のヒキガエルにあたるものである。この種、Tetrapodophis amplectusは、白亜紀前期(約1億4100万年前)に生きていた、ヒキガエルに似た小型爬虫類とも言われている。
化石の研究は、トカゲからヒキガエルへの移行について重要な進展をもたらした。このヒキガエルの四肢には力があり、獲物を捕まえることができる可能性がある。おそらく地上生物として適応したヒキガエルは、海生の先祖から進化したと考えられ、さらに化石は、早い段階での食事への依存性を示す証拠としても注目されている。この発見は、初期のヒキガエルがどのように、地上生活に適応していったかを理解する上で、極めて重要な手がかりになるだろう。