科学

過酷な環境をサバイバルする「クマムシ」新種がDNA損傷を治癒する能力もあり!

2024-10-29

著者: 健二

新しいクマムシの最強系が発見されました。

エイリアンと呼ばれる8本足の微小生物、クマムシ。しかも、人間の死後の1000倍もの放射線に耐えることができ、過酷な環境でも生存できるという知見が得られています。

環境ストレスの中でのDNA修復能力

最近発見されたクマムシの新種は、環境ストレスの高い場所で特にDNAの損傷を自分自身で修復していることがわかりました。

この研究に貢献しているクマムシの専門家たち。最強のクマムシは何と1500種も存在していますが、地球上で最強の無脊椎動物だと言われています。また、新たな研究では、特に「Hypsibius henanensis」という種に焦点を当て、クマムシの分子メカニズムの解明が進められています。この研究結果は、将来的に宇宙旅行者の健康を保つ新しい方法として希望されています。

クマムシの防御メカニズム

論文の著者である中国科学院の研究者、Lei Li氏は「クマムシのような極限環境生物の極限環境耐性の仕組みは、まだ解明されていないストレス耐性の分子メカニズムの宝庫です。それらが放射線耐性に関連する機能研究になるかもしれない」と強調しています。

極限状態でも生存する能力

数十年前から知られているクマムシの防御メカニズムで有名なのは、死ぬような状態になっても機能する能力。8本の足を全て引っ込めながら、体内の水分を極限まで失い、体を固まらせる状態で生存することができる...というか、脱水状態になると存在するのです。

この脱水状態は、他の防御措置と関連していて、数十年前の期間、極限状態で生き延びることを可能にし、環境温度、強い放射線、宇宙の真空でも生存可能であります。また、水さえあれば、眠りから目覚めることができるのです。

自分でDNAを修復する機能

サイエンス誌で発表された研究論文では、科学者たちが46年前に中国・河南省で発見したクマムシ種のゲノム配列を解析したそうです。このクマムシ種は放射線にさらされると、強度な防御システムを活性化させDNAを損傷から保護します。それだけでなく、発生した切断も修復することがわかりました。

最近発見されたこの新種は、合計17407個の遺伝子を持ち、その30%がクマムシ特有のものでした。一連の実験で、科学者たちは新たに発見したこのクマムシの遺伝子200個のレコードを取得しました。その結果、DNA修復、細胞分裂、免疫反応に関連する2801個の遺伝子が活性化されることが示されました。その中の1つ「TRID1」は、DNAの二本鎖切断を修復するために、損傷部位でタンパク質「BP1」を集めることが明らかになっています。

またその耐性には、他の遺伝子も活用されていることもわかりました。放射線被曝によって生じる活性酸素による損傷を生成する遺伝子「DODA1」、さらにクマムシの細胞をミトコンドリアの損傷から保護する「BCS1」といった遺伝子も使用されているのです。

地球上での分布と研究の重要性

米Gizmodoが取材したワイオミング大学分子生物学部のThomas Boothby助教授は、クマムシについて、「クマムシは、深海環境から高山の頂上まで、そして南極大陸を含む広い範囲で見られます。極限のストレスに耐えうる能力が、異なる生物群系への広範な進出を可能にしたのではないか」と説明しています。

Boothby助教授は2021年にクマムシを宇宙に送り、国際宇宙ステーションの過酷な環境にさらすことを行った際、どのように極限環境に耐えられるのかを研究した生物です。「クマムシが宇宙空間や宇宙旅行者をどのように守ることができるのかを理解することは重要です。なぜなら、長期の宇宙旅行中に人間が経験するストレスや機能的障害に対する治療法や戦略を開発することに役立つからです」とBoothby助教授は語っています。

加えて、「宇宙旅行中の放射線を含む極限的なストレスに対処するために、クマムシの独特なサバイバル戦略をより好く理解することは、宇宙でのストレスから人類をどのように守ることができるかを理解するヒントとなります。これは、安全で持続可能な深宇宙探査や有人長期宇宙ミッションについて重要になってくるでしょう」と述べています。