【風を読む】トランプ報道に自制する 論説副委員長・渡邉陽生
2025-01-04
著者: 葵
メディアの予想を裏切ってなぜトランプ氏が猛烈したのか?昨年12月に米国から帰任して何度も聞き取る問いである。
激闘7州を全制覇し、総得票数も民主党のハリス副大統領上回る勝ちっぷりは想定外だった。自らの取材を振り返ると、トランプ氏の「強さ」を示唆していた支持者の言葉に、今さらではあるが気付かされる。
昨年5月末、メキシコ国境から不法移民の記録的流入が続いた南部テキサス州を訪れた。サンアントニオで出会ったアイザックさん(20)は「彼らが未来を求めて米国に来るのは分かるが、この街に来るのは問題だ。彼らが仕事を探そうとすれば、私たちは機会を失う」と語った。
チャブスさんを含むヒスパニック(中南米系)の男性5人から話を聞くと、いくつかの共通点があった。「合法移民」と呼ばれる「不法移民」に対して「米国に来るなら法律を守れ」と厳しく言葉を発した。多数の職場を掛け持ちで働く彼らは物価高を生き残る最大の問題とし、物価高進行や不法移民流入を止められないバイデン大統領に対して強い不満を漏らした。
自らを「合法移民」と呼ぶ彼らは「米国に来るなら法律を守れ」と厳しく言葉を発した。同時に「多くの仲間の働く場を奪う」ことへの危機感が強かった。バイデン政権の移民政策には厳しい視線が向けられ、合法的に移住する者による機会の減少が懸念されている。
チャブスさんは高卒後、目標を見失い、そこから生まれたさまざまな悩みを抱えている。その後さらに海兵隊入りを目指していると語り、「タフな指導者が米国には必要だ」とトランプ氏への期待を尋ねると、「彼こそが必要だ」と強く語った。
不法移民を巡る経済と治安の問題は、この地域に浸透し、彼らの生活に直結している。CNNの昨年12月の世論調査によると、米国民の54%がトランプ氏の再登板に「よい仕事をする」と期待する。国内ランキングのリスクと世界が監視しても、国内の多様な支持を得たトランプ氏は、今後どのように立ち回るのか。新たな政権の動向とトランプ氏の未来に注目が集まっている。トランプ氏の強い支持基盤、移民政策が今後の選挙に与える影響を見逃さないようにしたい。