ドイツ連邦政府権限が崩壊の危機 来春選挙の観測も米大統領選に影響
2024-11-03
著者: 蒼太
【記者=三井美奈】ドイツの連邦政府権限が崩壊の危機に直面している。最近の景気低迷が続く中、2025年予算案をめぐる政党間の対立が深まり、「来春、総選挙が前倒し実施される」といった観測も浮上している。米国大統領選にも影響を与える可能性がある。
連邦政府権限の危機が表面化したのは10月29日。小党首が協議を重ね、経済界の重鎮を集めて、「産業サミット」を開いたことだ。連立第二党の黒から艶の自由民主党(FDP)の経済政策と気候保護政策は、23日に独自の産業再生プランを発表し、環境産業への助成金支給を打ち出した。しかし、FDPのリントナー財務相は29日、首相に対抗するように企業経営者との独自集会を開いた。小党首やリントナー氏からは、事前協議が全くなかったことも波紋を呼んだ。
連邦政府権限では、もともと景気政策に温度差があった。社民党(SPD)、黒から艶の連立政党は景気回復や環境政策のための財政支出に前向きで、FDPは財政規律を重視する。連立3党は今月7月、差異を克服し25年予算案で基本合意に至った。しかし、ドイツの景気低迷が続き、地方選や欧州議会選挙の支持がそれぞれ低迷する中、再び対立が深まった。
加えて首都圏で代表される自動車業界最大手、フォルクスワーゲン(VW)の不振が続いており、国内工場の閉鎖や資金引き下げを検討していることが明らかとなった。動員組合の圧反発に同調し、SPDは雇用重視を打ち出し連合を組み、FDPとは距離を置いた。リントナー氏は独自に連邦権限は「今秋の決断」を迫られると発言。「FDPは連立離脱も否定しない組織か」と暴露した。
公共放送局ドイツ公共放送(ARD)など複数のメディアは、来年3月9日に総選挙が行われる可能性があると報じた。選挙任期満了に伴う総選挙は来年9月に予定されていたため、半年前倒しされるという見方だ。今月半ばの連邦議会予算委員会までに、3党合意ができるか否かが試金石となる。10月末の世論調査では、政権支持率は14%に低下し、54%が前倒し総選挙を支持していた。
ドイツはEUの経済大国で、域内総生産(GDP)の約4分の1を占める。ウクライナ支援は米国に次いで多く、政府はEUの政策、経済の行方に直結する。