シンガポールにある南洋理工大学(NTU)は、8月26日に、NTUリーコンサイアンス医科大学(LKCMedicine)が主導する研究チームからの発表があった。この研究では、COVID-19に感染し回復した人々が、新型コロナウイルス感染後の1年間において、長期的な健康問題のリスクが高いことが示された。研究成果は学術誌『Journal of Travel Medicine』に掲載された。

特に、COVID-19に感染した人々は、回復した後も不整脈や心臓疾患、血栓等の心血管に関する合併症が55%も高くなる可能性があるという。具体的には、2021年7月から2022年10月の間にシンガポールでCOVID-19に感染した1,707人の住民を対象に調査され、124,832件の診療記録が分析された。この調査では、感染後31日から300日経過した時点での心疾患、神経系、代謝系に関連した新たな健康弱者になったケースを追跡した。

この研究には、LKCMedicineだけでなく、シンガポール保健省やシンガポール全体の病院が参加しており、COVID-19回復者における合併症の長期的リスクを初めて検討したものである。この研究結果は、COVID-19の影響がどれほど長引くかを示しており、今後の健康政策の必要性が強調されている。LKCMedicineの研究者であるLim Jue Tao氏は、"環境的要因がCOVID-19の長期的合併症に影響を与える可能性があるため、これまでの研究では見過ごされていた側面に焦点を当てた"と述べた。

特に、COVID-19に感染した人々と比較して、風邪やインフルエンザを経験した人々の健康リスクが比較的低いことから、COVID-19に特有の影響が明らかになっている。研究チームは、COVID-19の長期的影響を軽減するためには、適切な健康管理と予防策が必要であると強調している。彼らは、入院患者に対する追跡調査や、コロナウイルスに対するワクチン接種の重要性も訴えかけている。

この研究から明らかになった健康リスクは、COVID-19がもたらす新たな課題を示しており、医学界や公衆衛生の専門家は今後もモニタリングを続け、迅速な対応を求められる。