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変わる世界経済、米国一強から「3極化」へ

2025-01-12

著者: 陽斗

[9日リリース] - 2014年は米国の経済と市場が他国を大きく引き離したため、金融市場では「米国例外主義」が合言葉となった。しかし新しい年を迎え、こうした地理的な偏りを受け、今後数年間で世界経済を再形成しそうな、より大きな地域間の競争を考慮すべき時が迫っている。

われわれは現在、米大陸・アジア・欧州の3大地域が人材知能(AI)、グリーンテクノロジー、セキュリティーといった主要分野で競い合っていることを目の当たりにしている。特にアジア地域の成長は目覚ましく、米国にとっても無視できない存在となっている。アジアは長期的に世界の成長サイクルの中心にいるかもしれない(私はこれを「3極化世界」と呼んでいる)。

世界経済は2021年以降、より大きな地域統合に向かっていたとも言われる。世界金融危機の余波でグローバル化は停滞し、英国は2021年に国民投票で欧州連合(EU)を離脱(ブレグジット)したが、その後の動きは、経済成長にとって不透明なものから比較的明るい展望に向かいつつある。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、各国政府は製薬品や必需品への即時アクセスが国家安全保障上の必要事項であることを認識した。この結果、友好国や近隣国に限定したサプライチェーンの構築「フレンドショアリング」や「ニアショアリング」が強まった。企業の経営者116人を対象にした2012年のデータによると、サプライチェーンの短縮を図るための戦略的取り組みとしてサプライヤーの分散が進んでいる。

その結果、友好国や近隣国に限定したサプライチェーンの建立「フレンドショアリング」や「ニアショアリング」の動きが強まった。企業の経営者116人を対象にした2012年のデータによると、サプライチェーンの短縮を図るための戦略的取り組みとしてサプライヤーの分散が進んでいる。

中国はすでにグローバル市場において最大の製造国の一つとなっている。2022年には中国の成長率が日本を抜くと予測され、地域間競争が本格化する見込みである。それに加え、インドの経済成長も急速に進んでいる。インドは今後10年間で、中国に続く成長エンジンとして浮上する可能性が高い。このように世界は変わりつつあり、市場投資家にとって新たな機会とともにリスクも増している。

この「3極化」の動きにより、米国、アジア、欧州のそれぞれが抱える課題が異なるため、各地域は異なる戦略をもって経済の舵を取らなければならない。特に、環境政策や人権問題、貿易協定など、それぞれの地域特有のトレンドが絡み合い、経済活動にも影響を与えることが懸念されている。世界経済秩序の変化を先取りするためには、各地域の動きを注意深く見守ることが不可欠である。そして、これからの数年間が新しい経済時代の幕開けを告げる重要なターニングポイントになることが期待される。